ここ数年、韓国文学はブックフェアが開かれるほど人気のようです。
それほどたくさんの本を読んだわけではないですが、「手始めに何から読めばいい?」と聞かれたら(誰にも聞かれないけど)、断然おすすめするのがチョン・イヒョンさんの『マイスウィートソウル』です。
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『マイスウィートソウル』
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編集者として働くオ・ウンス、30歳、ひとり暮らし。元カレの結婚報告、親友の結婚宣言、上司のセクハラ発言、母のイヤミと闘いながら毎日を送っている。ある日、年下の映画監督志望の男の子テオと知り合い、一夜をともにしてしまう。そして、上司から経営者であり大人の男性であるヨンスを紹介され……。
韓国版『ブリジット・ジョーンズの日記』で、「セックス・アンド・ザ・シティ」で、『東京タラレバ娘』ともいえる、アラサー女性の日々が赤裸々に綴られている本作。
著者のチョン・イヒョンさんは「記録者」とも呼ばれているそうで、なるほど、この年代に起こりえる、あらゆる問題にウンスは直面しているなと感じます。どの街でも、女性たちの生きる道はラクではないみたいですね。
もとは「朝鮮日報」という保守系の新聞に連載されていたのですが、2018年には韓国SBSでドラマ化もされていました。
わたしが「初めての韓国文学」にこの本をおすすめする理由は、ふたつ。
ひとつは、圧倒的な読みやすさです。地の文も口語体なので、とてもポップですし、翻訳のうまさもあってスラスラいけます。
ふたつめは、ウンスの悩みはたぶん世界共通だから。
会社員としての不満や、女性ならではの悩み。そして、恋心か経済力かで揺れる思い。「セックス・アンド・ザ・シティ」でも、キャリーやミランダが迷っていましたよね。
これが韓国女性になると、「両親」という悩みのタネも抱えることになるのだなーということが、よく分かります。
『マイスウィートソウル』を読んでしばらくしてから、同じチョン・イヒョンさんの『優しい暴力の時代』を読んだので、ちょっとギャップが大きかった。こちらは胸にチクチクと突き刺さる短編集です。
『優しい暴力の時代』にも出てくるように、現代の韓国女性にとって母との関係は、就職や結婚以上に乗り越えなくてはならない高い壁なのかもしれません。
『マイスウィートソウル』では、元カレの結婚式の翌日、心配して電話をしてきた母に、ウンスがアワアワしながら対応するシーンがあります。そして、実感するのです。
息切れしてしまいそうな競争社会を駆け抜けて、ウンスは幸せをつかむことができるのか。
にがい思い出もたっぷりつまっているけれど、それでも「スイート」な街・ソウルで生きる女性たちに、共感の嵐でした。
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