韓国文学というと重厚な歴史小説のイメージがありましたが、最近ではファンタジーやミステリーも邦訳されるようになってきました。
ほのぼのファンタジーがお好きなら、『保健室のアン・ウニョン先生』をおすすめします。タイトルからは想像もできない、ちょっとぶっ飛んだ楽しさのある小説です。
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『保健室のアン・ウニョン先生』
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“ゼリー”状になった人の欲望が見えてしまうアン・ウニョン。養護教諭となり、私立M高校に赴任してきます。この学校には、原因不明の怪奇現象や不思議な出来事が次々と起きているのです。BB弾の銃とレインボーカラーの剣を手に、同僚の漢文教師ホン・インピョとさまざまな謎や邪悪なものたちに立ち向かっていく。はたしてM高校にはどんな秘密が隠されているのか……。
霊が見える、というとおどろおどろしい感じがしますが、アン・ウニョン先生の目に映っているのは「カタツムリが這った後の粘液」のようなゼリーです。それをオモチャの剣でピシパシ切り捨てていく、という描写が、とにかくコミカルです。
ちょうど9月25日から、Netflixでドラマの配信も始まりました。主演はチョン・ユミ。もうすぐ映画「82年生まれ、キム・ジヨン」が公開されるので、そちらも楽しみです。
学校に起きる奇異の原因は、どうやら地下室にあるらしい。ということで、アン・ウニョン先生は勇敢にも、武器を手に地下に降りていくのですが。
はたからみたら、オモチャの剣を振り回して遊んでるようにしか見えない!!!
アン・ウニョン先生の怪しい言動を受け入れ、協力することになるのがホン・インピョ先生。学校の創立者の孫にあたります。そのせいか、強力な守護霊に守られているそうで、アン・ウニョン先生はパワーが落ちるとホン・インピョ先生の手を握って「充電」します。
このふたりが意外にもナイスコンビになっていくのですけれど、もし「上昇志向の強い母親」がいたら、「No!」と言いそうなタイプなんですよね、どちらも。ドラマ「よくおごってくれる綺麗なお姉さん」のジナママだったら即アウトかもしれない。
幼い頃に母と別れ、特異な体質もあって30代になってもひとりで暮らすアン・ウニョン先生。
大らかな人柄だけど、足に障害があって運動ができないホン・インピョ先生。
社会の中では「弱者」とカテゴライズされそうなふたりが、高校生たちのために無報酬で尽くすんです。生徒たちが抱える不器用さや生きづらさは、放っておくとガチの悪意に育つ可能性がある。それを、本人が気づかないうちに摘み取ってしまうという設定には、限りないやさしさを感じました。
作者のチョン・セランさんは、この小説を「自分の快感のために書いた」と語っているそう。いや、このノリは一緒に乗っちゃった方が楽しいと思います。レインボーカラーの剣が欲しくなっちゃった。
ドラマの脚本は、そのチョン・セランさんが書いています。ぜひティザー動画を観てみてください。チョン・ユミさんの凜々しくてかわいい殺陣姿が拝めますよ。
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