「あなたのためを思って言ってるのよ」
よく聞く言葉だけど、なんて空疎なものだったんだろう。
ソン・イェジン×チョン・ヘイン主演の恋愛ドラマ「よくおごってくれる綺麗なお姉さん」には、何度もこのセリフが登場します。
交際に反対する母から。
セクハラした上司から。
告発を止めようとする同僚から。
メインのお話はソン・イェジンとチョン・ヘインの恋物語で、ふたりでチュッチュチュッチュチュッチュチュッチュチュッチュチュッチュチュッチュチュッチュチュッチュチュッチュチュッチュチュッチュチュッチュチュッチュチュッチュチュッチュしています。
(画像はcinemacafeより)
微笑ましい「ふたりだけの世界」を描くのと同時に、アン・パンソク演出、キム・ウン脚本家コンビによる社会問題へのカウンタードラマでもあります。
☆☆☆☆☆
ドラマ「よくおごってくれる綺麗なお姉さん」
DVD
Netflix配信
https://www.netflix.com/title/80990935
☆☆☆☆☆
35歳のジナは、親には結婚を急かされ、浮気した彼氏に振り回され、職場ではセクハラされ、息が詰まるような毎日を送っていた。ある日、親友のギョンソンの弟で、自分の弟スンホの親友でもあるジュニに再会して恋人関係に。しかし、ジナの母親は交際に大反対。会社でもセクハラの内部調査をすることになり……。
ジナを演じるのは、「愛の不時着」で大人気となったソン・イェジン。ただし、ジナはチョーーーー決められない人です。「Seri's Choice」なんて名前の会社社長で、決断力を売りにしていた姿とは正反対。めちゃくちゃもどかしい。
そんなジナを、「あなたはあなたのままで価値がある」と抱きしめたジュニは、チョン・ヘインが演じています。
ふたりが恋に落ちていくところや、お互いを気遣い、支え合う姿にはすごくトキメキました。
ですが、ジュニと付き合う前のジナは、「タンバリン」とあだ名されるほど、宴会の盛り上げ係だったんです。男性のテーブルに行っては肉を焼き、お酒を注ぎ、カラオケではタンバリンを持って踊る。
「自分がガマンしてその場がおさまるのなら」
そんな気持ちで耐えてきたジナですが、会社の調査に応じることを決めます。ここで、男性陣がとった策が「離間計」です。女性チームを仲たがいさせようとするたくらみは、人事権をちらつかせてのことでした。
「あなたのためを思って言ってるのよ」
この言葉になかなか「No」と言えないジナ。宴会のときだって、イヤそうだったのに「No」と言えなかったんですよね。だから思わず思ってしまった。
「あなたも悪いよ!」
そしてすぐに気がついたんです。これこそ、男性陣の思うつぼだと。
「よくおごってくれる綺麗なお姉さん」は、2018年上半期のドラマ話題性ランキングで1位になったほか、数々の賞を受賞したそうです。「ふたりだけの世界」と同時並行で進む、「セクハラ問題」。重いテーマでありながらドラマが支持されたということは、それだけ関心の高いテーマだったのだと思います。
韓国社会で長く「暗黙の了解」のように続いてきた女性の苦しみに、一石を投じた小説に、『82年生まれ、キム・ジヨン』があります。この本の編集者は、「キム・ジヨンの前と後で、ジェンダー意識が明らかに変わった」と語っておられます。
(全編韓国語の動画でごめんなさい。いつか翻訳します)
ドラマ自体は、ソン・イェジンとチョン・ヘインのラブラブ感が楽しめます。でも、それだけじゃなく。「セクハラ」や「ジナママ」の価値観に、韓国社会の変化と、変わらなさを大いに感じさせてくれるドラマです。
ちなみに。
「綺麗なお姉さん」は、ぜんぜんおごってくれません……。
ドラマ「よくおごってくれる綺麗なお姉さん」全16話(2018年)
監督:アン・パンソク
脚本:キム・ウン
出演:ソン・イェジン、チョン・ヘイン、チャン・ソヨン、ウィ・ハジュン、オ・リュン
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