スター俳優を中心に映画をつくる「スターシステム」は、ある程度の興業を見込して製作に入れるメリットと、俳優を型にはめこんでしまうデメリットを抱えています。
『韓国映画100年史』という本では、韓国映画の戦略のひとつとして「スター俳優が扮するキャラクターの力」が挙げられているほど。ソン・ガンホやファン・ジョンミンら、「スター俳優」が出演というだけで観たくなってしまいますもんね。
「キャラクター戦略」というよりは、「この人頼み」な映画作りになっていないかと思ってしまうくらい、映画への出演が続いているマ・ドンソク。「新感染 ファイナル・エクスプレス」で強烈な拳を見せつけて以来、ヤクザものやノワール劇に立て続けに出演しています。
コメディ映画「スタートアップ!」では、これまでの型を覆し、お茶目な姿を見せてくれるのかと思いきや……!?
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映画「スタートアップ!」
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学校も嫌いで家も嫌い、母親に反抗しては1日1発強烈ビンタを食らう少年テギル。ついに家出したテギルは、偶然入った中華料理店で、ただならぬオーラを放つ厨房長コソクに出会う。住み込み配達員となり、世の中を学んでいくのだが……。
原作は韓国のwebマンガで、ド底辺に暮らす幼い主人公が成長する姿を描いたもの。映画では中華料理店主の家族の話がかなり省略されているそうです。
粋がってばかりの若造テギルは、パク・ジョンミンが、取り立て屋の仕事に就いた親友サンピルは、チョン・ヘインが演じています。いま大注目の若手俳優の共演です。
(画像はKMDbより)
そこに加えて、怪しすぎる厨房長コソクを演じるのがマ・ドンソク。筋肉モリモリの腕で中華鍋をふっています。ラブリー……!?
(画像はKMDbより)
家出したテギルが行き着いた中華料理店は、行き場所をなくした者たちが集まる「避難所」のようだなと感じました。
悲しい思い出をもつ店主。物覚えの悪い先輩。家出少女のキョンジュ。そして、怪しい厨房長コソクにも過去がある。
とはいえ、肩を寄せ合って慰め合い、励まし合う……展開には決してならない。口ばかり達者なテギルに、お金を稼ぐとはどういうことなのかという「オトナへの道」を迫ることになります。
親友のサンピルもやはり、取り立て屋という仕事の中で、「弱者にやさしくない社会」の現実を知っていく。家出少女も、「ツッパることが勲章だって信じてた~」な状態から成長していきます。この役を演じたチェ・ソンウンがかわいくて、大発見でした。赤い髪の方です。
(画像はKMDbより)
序盤はコメディ感強めで引っ張っていくのですが、コソクの過去が明らかになったとたん、映画も転調します。
マ・ドンソクの本領発揮! ザクッとバシッとブキッといくぜ、マブリー!
という、「待ってました!」なシーンが出てきます。
監督と脚本を担当したチェ・ジョンヨルは、これが長編2作目。青春群像劇が続いていますが、彼の目線のあたたかさは、これからどんな映画に向けられていくのか。ちょっと楽しみにしています。
お気軽に観られる映画でありながら、現代社会の縮図をコミカルに描いたともいえる「スタートアップ!」。マンガ版との比較はこちら。マブリー、さいこー!
(画像はKMDbより)
映画「スタートアップ!」102分(2019年)
監督:チェ・ジョンヨル
脚本:チェ・ジョンヨル
出演:パク・ジョンミン、チョン・ヘイン、マ・ドンソク、ヨム・ジョンア
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