英語の「mystery」の語源は、ギリシャ語の「ミュステーリオン(μυστήριον)」です。理解不可能なものや、秘密を意味し、それが古代ギリシアや古代ローマの秘密の儀式を指すようになったのだとか。
奇妙な出来事や理解不可能な出来事に引きつけられてしまう。そしてその謎を解明していく様子に、ハラハラドキドキする。
“秘密”を語源とする「ミステリ小説」は、まさしく“秘密”に魅せられる小説でもあります。
大好きなジャンルなので、それなりに読んでいる方でしたが、新井久幸さんの『書きたい人のためのミステリ入門』を読んだら、知らない本がいっぱい!
この本はちょっとヤバい。今すぐミステリを読みたくなる!!!
タイトルには「書きたい人のための」とありますが、「読みたい人のための」超一級のブックガイドでもあります。
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『書きたい人のためのミステリ入門』
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ミステリにおける「三種の神器」とは。
・伏線
・論理的解決
謎がなければ、そもそもミステリにはならないし、「お前が犯人だ!」と言われて「誰やねん!?」となったのでは意味が分からない。「三種の神器」がうまくかみ合ってこそ、ミステリ小説として成立するのです。
初めての推理小説と言われているのは、1841年に発表されたエドガー・アラン・ポーの『モルグ街の殺人事件』です。「三種の神器」はこの小説から始まっているそう。
ミステリは、まずはフーダニット(犯人は誰か)の小説がたくさん書かれ、そこからハウダニット(どうして・どうやって)、ホワイダニット(なぜそんなことをしたのか)へと発展していきます。
わたしがあまり心引かれなかったのはハウダニットの小説で、フーダニットやホワイダニットが好きだったんだなーと読みながら気がつきました。
「ために」設定されたトリックの小説を読んでしまったせいかもしれません。でも、この本を読んで、あらためてハウダニットの名作にもチャレンジしてみたくなりました。
数々のミステリ作品が紹介されますが、ネタバレはほぼなし。地の文の重要性や視点のもつ意味、世界観や人を描くということといった、小説創作に必要な事柄が解説されています。
なぜそんなことができるのかというと、著者の新井さんは長年、新人賞の下読みを担当されてきたから。初心者が陥りがちなポイントを知り抜いた上でのアドバイスなんです。
そのため、ミステリといわず、小説を書くつもりなんてないけど?となってしまいそうなのですが。
この本を読んでから小説を読むと、「あ、これ?」と気がつくところが出てきます。これが深く読めるようになったってこと……かどうかは分からないけど。いま仕事のために読んでいるネット小説は、明らかに違った。笑
書きたい人も、読みたい人も、作品世界をより楽しむために絶好の一冊です。
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