この映画はずるい。
絶対泣いちゃうって分かってしまう組み合わせなんです。だけど、しみじみといい映画なのです。
主人公は、ひと夏をおばあちゃんと過ごすことになった都会っ子の少年。数々の衝突の末、「ありがとう」と「ごめんなさい」を言えるようになるまでの成長が、ものすごくイタい。だって、わたしにもこんな時期はあったから。
上品に言っても「クソガキ」、はっきり言うと「クソなクソガキ」な少年を、決して叱ることなく受け入れる「おばあちゃん」という存在に、ただただ涙してしまいました。
“世界中のおばあちゃんに捧ぐ”という映画「おばあちゃんの家」です。
☆☆☆☆☆
映画「おばあちゃんの家」
DVD
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母親と2人でソウルに暮らす7歳の少年スンホ。失業した母が仕事を探す間、おばあちゃんの家に預けられることに。母の実家はテレビも映らない山の中にあり、おまけにおばあちゃんは耳が聞こえず、文字も読めず、言葉を話すこともできないという。おばあちゃんに対してワガママ放題のスンホだったが……。
監督のイ・ジョンヒャンは、「美術館の隣の動物園」でデビュー。この映画が2作目になります。ロケハンで訪れた山中に住むおばあちゃんを、そのまま「おばあちゃん役」に抜擢。でも、このおばあちゃん、生涯で一度も映画を観たことがないという方なんです。
腰は45度に曲り、すべてがスローペース。山の中を歩くシーンが何度かあるのですが、「ここではもう少し速く歩けますか?」と監督がお願いしたことがあるそうです。ところが、「はいはい」と返事して、まったく同じように歩いたのだそう。
ものすごくもどかしかったけれど、これがこの世代のリアルなのかもしれないと考えて、そのままOKにしたとインタビューで語っていました。セリフがないとはいえ、無表情の中にとても豊かな感情が感じられます。
都会の子どもにとっては、テレビが映らないとかあり得ないし、トイレが外にあるとか、だから夜中は「おまる」にするしかないとか、ふざけんな!という事態ばかり(真っ暗闇なので、トイレまで行けないのです。昔はよくそうしていたそう)。スマホがない時代の話ですが、この山の中には、絶対電波が通っていないだろうなー。
おばあちゃんが聞こえないのをいいことに、罵詈雑言をぶつけるサンウ。イタズラというより、度を超えた「悪さ」ばかりして、不満をぶちまけます。
そんな「クソガキ」を、おばあちゃんはすべて受け入れるんです。
名場面の中からひとつだけ紹介しますと、やっぱり「フライドチキン」のシーンかな。
おばあちゃんの作ってくれたご飯を無視して、持参したスパムの缶詰などを食べているサンウ。そこでおばあちゃんが、「何か食べたいものはあるか?」と聞いてくれるのです。
「フライドチキン!」
そうリクエストするものの、おばあちゃんには分かりません。鶏のモノマネをして、やっと通じた!
(画像はDaumより)
山を下りて鶏を仕入れ、台所でおばあちゃん自ら絞めて、作ってくれたのは……。
鶏の水炊き!
「誰が鶏を溺れさせろって言ったんだよー!泣」
サンウはそう言ってダダをこねるんですが、それは仕方ないなと笑ってしまった。
そのサンウを演じたユ・スンホは、後になってテレビ番組でおばあちゃんに謝罪をしていたそうです。いくら演技とはいえ、失礼が過ぎたのではないかと気になっていたのだとか。時々、牛肉を持って訪ねて行ったりもしているそうです。
おばあちゃんの不器用なやさしさに気づいた時、不器用な孫も成長していきます。ふたりの別れは、これ以上ないくらい温もりのこもった「手紙」で終わります。
(画像はDaumより。サンウの住所が書いてあって、イラストの上には「病気です」の文字が)
孫という存在に対して、すべてを受け入れ、ひたすらに愛情を注ぐおばあちゃん。これは「オールドスタイル」なのかもしれないと、いま公開中の映画「ミナリ」を観ながら思いました。
韓国式“世界中のおばあちゃんに捧ぐ”、ふたつの映画。見比べてみるのもおすすめです!
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