「料理研究家論」とはつまり、テクノロジーの進化とフェミニズムの歴史そのものなのですね。阿古真理さんの『小林カツ代と栗原はるみ 料理研究家とその時代』には、それぞれの時代における料理哲学が見えました。
ローストビーフや肉じゃがのレシピを定点観測した比較も。
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『小林カツ代と栗原はるみ 料理研究家とその時代』
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まずは“料理”に関する肩書きの多いことにビックリ!
料理研究家、料理評論家、フードライター、フードコーディネーター、レストラン評論家などなど。スイーツ評論家なんてものもありました。
阿古真理さんの『小林カツ代と栗原はるみ 料理研究家とその時代』は、タイトルどおりテレビ放送が始まった時代から、料理番組を持ち、料理教室を開き、レシピを開発してきた「料理研究家」の立ち位置と、変化を追ったノンフィクションです。
歴代の研究家の哲学には、生活への想いがあふれていました。「料理研究家論」とはつまり、テクノロジーの進化とフェミニズムの歴史そのものだといえます。だからこれだけ「肩書き」が増えていったのかも。
1950年代後半、「三種の神器」と呼ばれる家電3品目が普及したにもかかわらず、1960年代に行われた調査で女性の家事時間は減っていないことが判明。その理由として、家庭料理のハードルが上がったことが指摘されています。
フェミニストの上野千鶴子さんは家事労働を「愛という名の労働」だとして、「主婦」という身分が誕生して以降、「家事労働」が発明されたと指摘。
高水準の「労働」が求められるようになった結果、「料理が苦手」「めんどくさい」と感じる層も増加傾向に。そうした意識を持つ人たちに向けて、料理研究家たちはどのようなメッセージを発してきたのか。膨大な書籍や雑誌資料を基にていねいに追いかけています。
ローストビーフや肉じゃがのレシピを定点観測した比較もおもしろい。部位は? 出汁は? といった視点から、時代時代で大切と考えられていたことが透けて見えるのです。
昭和のはじめに料理研究家と呼ばれていた人たちは、生まれ自体がセレブ階級。そのため、本場の西洋料理に触れることができた人たちでした。
その後、活躍を始めた城戸崎愛さんや小林カツ代さんは、家庭の料理を発展させる形で「料理家」としても活躍するようになった方たちです。わたしもひとり暮らしを始めたころ、レシピ本にお世話になりました。
そして、インターネットによって登場した「アマチュア」の時代。タダで、手軽に手に入るレシピが流行る中、プロの知識はどうあるべきなのか。
揚げ物が流行ったのは、家庭に換気扇が導入されて以降のことなど、なるほど!と思う知識もいっぱいです。昭和の終わり頃から気軽に海外旅行に行けるようになったことで、“現地”の味を知っている人も増えました。そんな中で行うレシピ開発って、本当にすごいことなのだと思います。
仕事をしながら“こなす”家事は、できるだけ時短したいし、マンネリも打破したい。でも、毎日している料理は、身体をつくるものなのです。外食・中食が増えたいま、「家庭料理」の存在価値を見直したくなりました。
家庭料理のプロとしてのプライドを持っていた小林カツ代さん。主婦という立ち位置でカリスマとなった栗原はるみさん。キャスリーン・フリンの著書『ダメ女たちの人生を変えた奇跡の料理教室』なんて読んだら、なんて仰るか聞いてみたい。
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『ダメ女たちの人生を変えた奇跡の料理教室』
https://note.com/33_33/n/n039e104b328e
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