キテレツ本かと思いきや、とびきりおもしろかった!
新型コロナウイルスによって、首相官邸にクラスターが発生し、時の総理が死亡。混乱する政治と事態収拾のために集められたのは、AIとホログラムで蘇った、歴史上の偉人たち。『もしも徳川家康が総理大臣になったら』は、現実の政治を皮肉るブラック感にニヤニヤしつつ、すごく疾走感のあるストーリーで一気に読みました。
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『もしも徳川家康が総理大臣になったら』
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総理大臣はタイトルどおり徳川家康、官房長官は坂本龍馬です。「江戸時代」を始めた人と、終わらせた人が、政権でパートナーを組むなんて。財務大臣は豊臣秀吉、経済産業大臣は織田信長と、師弟コンビ。副大臣には石田三成がついていて、オイオイいいんかいな……と、内閣の顔ぶれを見ているだけでおもしろいです。
(画像はAmazonより)
最初の顔合わせの時こそ、
“居並ぶ閣僚たちは、この日、初めて顔をあわせた。それぞれ違う時代からやってきているため、お互い、どう向き合ってよいか、まだ探りあうような雰囲気である”
という「そりゃそうやわ」な状況でしたが、さすが歴史に名を残すほどの偉人たちです。やるといったらやる。「民主主義」や「人権」という概念のない時代の人々が、現在の法律と折り合いをつけながら「合議」で政治を行う姿は、おもしろいのひと言。
最強内閣が次々と施策を実行し、国民の信頼を取り戻していく第1部では、読んでいるこちらも思わず熱狂してしまうんです。そして第2部に入ると、ミステリーの色が濃くなっていきます。
総じて感じるのは、偉人たちの言葉の重さです。
強い言葉を語るリーダーは現代にもいますが、なんでしょうね、これ。覚悟の違いなのかもしれません。
たとえば、新型コロナウイルス感染症対策に関するドイツのメルケル首相の演説は、心に訴えるものとして絶賛されました。
同じ頃の日本は……と思い出すとげんなりしてしまうのですけれど。この本で繰り広げられる最強内閣の決断力、実行力は、いままさにわたしが欲しかったもの!という気がしたんです。
町を完全ロックアウトするために配備されたのは新撰組。全国民に10日で50万円を配るために、江戸時代と明治時代の有能な官僚がAIで復活して奔走する。そうして内閣は、国民から熱狂的な支持を得ていきます。
どんどん気持ちよくなってしまいそうになった時、ハッと気がつきました。ナチスが登場したときって、こういう感じ……!? 誰かが「決めてくれる」って、なんてラクなんだろうという思いを、後半でズバリと突かれてしまう。
リーダーとは、何を語るべき人なのか。
報道の果たす役割とは。
パンデミックを鎮めるだけでなく、経済、DX化、防衛、外交、ナショナリズムなど、いまの日本が抱える問題に足りないものを、最強内閣が見せてくれているかのようです。つまりこの本は。
壮大で壮絶なる「温故知新」の物語だといえます。
学校の「歴史」の授業って丸暗記でつまらないとよく言われますが、教科書がこんな風に「人間の物語」として書いてあればなーと思ってしまう。
歴史好きも、リーダーシップを身につけたい人にもおすすめのこの本。部署の定例ミーティングで話したところ、CFOがまず買って絶賛。役員陣にも情報共有され、どんどん輪が広がることに。平和な会社だなーという事実が発覚しました……。
著者の眞邊明人さんは、吉本興業を経て独立したという方で、舞台の脚本家もされているそう。そのせいか、小説もとてもドラマ的でした。
これ、ドラマ化されるとうれしい。坂本龍馬官房長官は、ぜひ大泉洋さんで!
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