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『火狩りの王』#735


日本ではじめてのファンタジー作品と呼ばれた「コロボックル物語」から50年以上。日本版ファンタジーの世界も充実してきたなーと感じます。

最近読んでおののいたのが、日向理恵子さんの『火狩りの王』でした。

骨太の世界観と、絵の浮かぶ描写(そしてオソロシイ)、謎の深まる展開と、物語世界に引きずり込まれてしまいます。現在、四巻まで刊行されています。

☆☆☆☆☆

『火狩りの王』
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☆☆☆☆☆

<あらすじ>
人類最終戦争後の世界。大地は炎魔が闊歩する黒い森におおわれ、人体発火病原体に侵された人々は、結界に守られた土地で細々と暮らしていた。この世界で唯一、人が唯一安全に扱える〈火〉は、森に棲む炎魔から採れる。炎魔を狩り、火を手に入れることを生業とする火狩りたちは、黒い森を駆け、三日月形の鎌をふるう。近年、火狩りたちの間でまことしやかにささやかれている噂があった……。


11歳の灯子と15歳の煌四が主人公。ふたりとも、「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」はどこにいった!?という状況の中、生きてきたんです。

炎魔から人間が扱える「火」を回収する火狩りという仕事は、当然、命の危険と隣り合わせです。パートナーは、犬。灯子の暮らす村で炎魔に襲われ、命を落とした火狩りのパートナーを返すため、灯子は神宮のある都を目指すことになります。

この世界に伝わる噂とは。

“「虚空を彷徨ったとされる人工の星および千年彗星(揺るる火)を狩った火狩りは、『火狩りの王』と呼ばれるであろう」”

はたして、「火狩りの王」とは誰なのか。その人物は、この世界に平和と安全をもたらしてくれるのか。

闇の森のおどろおどろしさ、「火」に対する畏敬の念、人を信じる心の危うさ。そんな感情が一気に押し寄せてくる第一巻「春ノ火」でした。

このあと、

第二巻:影ノ火

第三巻:牙ノ火

第四巻:星ノ火

へと続いていきます。

現在は、火狩りたちの噂どおり、「揺るる火」が空に現われたところ。生まれた村から移動することのない世界で生きてきた灯子。本来、会うはずもない煌四と出会ったことで、世界が大きく揺らいでいくのです。あー、今後の展開が楽しみでならない。

アニメ化も決定したそうで、こちらも放送日が待ち遠しいです。


ファンタジーって、かかしが言葉をしゃべったり、人間が空を飛んだり、あんまり現実的に思えない……という人もいるのですが、わたしは子どものころからとても好きでした。

魔法の術やなんかにワクワクするところももちろんあるのですが、それよりなにより、とてもストレートに「生きる」ことの意味が伝わってくるからです。

灯子も、煌四も、生きていく目標とか、成し遂げたいプランなんて持っていません。だって今日を生き延びることで精一杯なんですもん。明日のことなんか考えられない。

そんな中で。

何をよりどころにするのか。

どすぐらい闇の中に浮かぶ友情に心動かされる物語です。著者の日向さんもこんなツイートをされてました。笑


でも、物語を書いていたときは、「生きろ、生きろ」と念じながら紡いでいたのだそう。

ハリー・ポッター並みに分厚い本ですが、一気読み必至。週末のお供にぜひ。


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