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『出版翻訳家なんてなるんじゃなかった日記』#754


「字幕翻訳の仕事をしているんですよー」と言うと、

「英語が得意なんですね!!!」

と返されて、とまどうことがありました。世の中、「翻訳=英語」と考える人が、こんなにいるなんてね。英語以外にも“外国語”ってあるんですよ……。

翻訳家は、どこかの企業で募集があって、応募して、就職してというパターンがほぼありません。ほとんどは、「知り合いのつて」で仕事を始め、少しずつ実績を作って広げていくのだそう。

20年ほど前、業界の隅っこでチマチマと、それらしき仕事に従事していたわたしにとって、「出版翻訳家」は憧れの職業でした。

宮崎伸治さんの『出版翻訳家なんてなるんじゃなかった日記』を読むまでは。

まさかこれほどまでに「買いたたかれる職業」だったとは思わなかったぜ……。

☆☆☆☆☆

『出版翻訳家なんてなるんじゃなかった日記』
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ベストセラー『7つの習慣 最優先事項』を翻訳し、次から次へと執筆・翻訳の依頼が舞い込む状況だったという宮崎さん。現在は、警備の仕事をされています。

年収1000万円を超える、超売れっ子翻訳家に何があったのか。

綴られているのは、出版界の「天国」と「地獄」です。

・印税がカットされる
・発行部数がカットされる
・約束がコロコロ変わる
・翻訳完成後に出版時期がずれる
・翻訳完成後に出版予定が立たない

などなどのトラブルや、翻訳家を“下”にみる編集者との付き合い、最後には訴訟ざたも。

フリーランスなので、仕事=翻訳だけしていればいいわけじゃないのは、そうなのでしょうけれども。あまりにも雑事に時間と精神を蝕まれ、宮崎さんは自ら“廃業”を決めてしまうのです。

わたしが経験した中でも、舞台関係と出版関係は、事前にギャランティが開示されないことが多くありました。なんとなく聞けないし、こちとらペーペーだし、言われるままにやるしかない。

そして。

実はわたしにも、100万円を超える未払い金があります。マジ、払ってほしいとは今でも思うけど、ゴチャゴチャと逃げ回る人に付き合って時間を消費する方が面倒くさい。そこで、いっさいの関係を絶つことを選びました。

数か月もの時間を投資して、自分の技術の限りを尽くして翻訳したものに対して、後出しじゃんけんでギャランティをいじるのは、どう考えてもアカンパターンなのでは。

それほど出版業界は厳しい状況なんだと言われれば、そうかもしれませんが、会社員である編集者はなんの傷も負わず、フリーランスにしわ寄せが来るのは納得できない。

厳しすぎる現実が綴られていますが、これから翻訳家を目指す人の気をくじく意図はないのだと思われます。厳しい現実を分かった上で、法律など、必要な知識を得て望みなさいね、というのが宮崎さんのメッセージです。

憧れの職業だった「出版翻訳家」の、世知辛い現実。英語でこれなのだから、“その他外国語”なんて、大変だろうなぁ……。

それでも、自分の名前で翻訳書が出せるという夢は、多くの人を引きつけます。宮崎さんのデビュー作も、翻訳家を目指す人の参考になりそう。

甘い蜜が、苦い味にならないよう、自衛手段を持たないと、ですね。

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