なんか、すごいものを見たという感じで、いまも衝撃が去らない。
ルッキズムをテーマに、人間の欲望を描いた韓国のサイコホラーアニメ「整形水」。原作は、ウェブトゥーンの人気漫画で、韓国映画としては珍しく「吹替え版」も公開されています。
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映画「整形水」
https://seikeisui.jp/
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人気タレントのメイクを担当しているイェジは、幼少時から自分の外見に強いコンプレックスを抱えていた。タレントからは罵倒され、出演したテレビ番組では悪意ある書き込みをされ、自暴自棄に陥ってしまう。そんなイェジのもとに、巷で噂になっている「整形水」が届く。顔を浸すだけで思い通りの容姿に変わることができ、後遺症も副作用もない奇跡の水だという。美しくなって、新しい人生を歩むべく整形水を試すイェジだったが……。
サイコホラーではありますが、実写じゃなくてアニメでよかった……というのが、正直なところ。グロさが抑えられるので、ストーリーに集中できるんです。これ、実写だったら、“薄目”になちゃったかもしれない……。
背景にも凝っていて、控え室には「トッケビ」などのドラマポスターが!
(画像はKMDbより)
日本版と韓国版のポスターを比べてみると、ちょっと違いが感じられました。
日本版は、打ち出しているのが“崩れる”恐怖なんですよね。
(画像は映画.comより)
一方の韓国版は“変身”なイメージ。
(画像はKMDbより)
日本の場合、岡崎京子さんの漫画『ヘルタースケルター』があるから、“崩れる”方がイメージしやすいからかもしれません。
沢尻エリカ主演×蜷川実花監督で映画化もされています。妖しい狂気の世界でした。
ルッキズムに対する社会の認識は、変わりつつあるようですが、まだまだ“改善”とはいえない状況です。チョ・ギョンフン監督は、「『美しさとは一体何だろう』という問いかけをしたかった」と語っています。
20年ほど前、韓国のテレビ局の仕事をしていて、外に撮影に出たことがありました。うっかり映り込みそうになったので、
「わたしは撮らないでくださいねー」
と言ったら、カメラマン(韓国人男性)は、こう言ったのでした。
「ブスは撮らないよ」
なにも言い返せなかった自分が、いまでも悔しい。あの時、「整形水」があれば、わたしも手に取っていたかもしれません。
顔も、身体も、すべてを一新して、あらたな人生を歩むことができれば……。
そう願ったことがある人は少なくないでしょう。一皮むけば、わたしの中にも底なし沼のような欲を抱えた「イェジ」がいるのです。
美を思う心も、ダイエットも、「生活習慣」そのものなのかも。
映画「整形水」 85分(2020年)
監督:チョ・ギョンフン
脚本:イ・ハンビン
原作:オ・ソンデ
出演:ムン・ナムスク、チャン・ミンヒョク、チョ・ヒョンジョン、キム・ボヨン、チェ・スンフン
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