スキップしてメイン コンテンツに移動

『ルワンダでタイ料理屋をひらく』#827


万事に大雑把で、計画性なんてナッシングで無鉄砲なわたしですが。

唐渡千紗さんのぶっ飛んだチャレンジには驚きました!!!

唐渡さんのエッセイ『ルワンダでタイ料理屋をひらく』は、タイトルどおり、ルワンダでタイ料理屋「ASIAN KITCHEN」を開業した際の、奮闘記です。

「段取り」とか、「気遣い」といった概念がない国の人々をマネジメントするわけなんですが、やらかすことが斜め上すぎて何度も笑ってしまいました。

☆☆☆☆☆

『ルワンダでタイ料理屋をひらく』

(画像リンクです)

☆☆☆☆☆

ルワンダは、アフリカ大陸の中央部に位置する内陸の国です。四国を一回り大きくしたくらいの国土で、丘が多いのだそう。

わたしが知っていることなんて、1994年のルワンダ虐殺を題材にした映画「ホテル・ルワンダ」くらいでした。

(画像リンクです)


この映画はホテルの支配人が、民族の垣根を越えて避難者を受け入れるヒーロー物語なのですけど、映画のことを聞いたレストランスタッフのひとりは、

「あんなの嘘っぱちだから」

とバッサリ。

元ストリート・チルドレンだった人、シングルマザー、家族を失った人などなど、唐渡さんのレストランで働くスタッフたちも、虐殺を生き延びたものの、心に傷を負った人たちでした。

そんな歴史があるせいか、そもそもちゃんとした教育を受けていない人もいて、大学を出ても職がないくらい「仕事」が少ない国。英語ができる人ならナニー(子どものお守り)やレストランでの仕事に就くことができるようです。

旅行で訪れたルワンダに魅せられ、移住を決めた唐渡さん。友人に「タイ料理屋とかいいんじゃない?」と言われ、タイ料理屋さんをひらくことにします。

でも、レストラン経営なんてしたこともない、ただの会社員で、タイ料理なんて作ったこともない。

なのに、「Let's go~!」ばりに、5歳の息子さんと向かってしまうんです。

こんな大胆な行動力を持ち合わせていない、わたしって小心者だな……と思わせられることしきりです。

ルワンダでは、工事のお金をだまし取られたり、外国人料金をふっかけられたり。約束の時間は守られず、言うこともコロコロ変わる。

なんといっても、休日が、前日に大統領からラジオで知らされるようなところなんです!!

ちょっとうらやましい……。

日本の“きっちり”した文化で生活していると、ある意味、「当たり前」の基準が爆上がりしているんだなと気が付きました。

タイ料理のレストランで働くスタッフたちは、どなたもすごく「マイペース」。

ライスがなくなったけど、「炊かなきゃ!」とは誰も思わない。

オーダーが入ってるのに、自分たちのまかないから作り始める。

お客さんにインテリア小物を褒められたら、売ってしまう。

電子レンジが汚れたから、分解して水洗いしちゃう。

もう、やることが予想の斜め上をいきすぎてて、唐渡さんは激おこプンプンなんですけれど、読んでいるこちらは笑いが止まりません。


こうした、自分が知っているものとは違う文化に触れると、自分のことがよく理解できるように思います。許容できる自分の枠組みがハッキリしていき、耐性をはかることができる。

日本は正確性とていねいさが命なので、人への評価は「減点式」になりがちだけど、ルワンダは逆。常になにかが「ない」状態なので、うまくいけばラッキーという「加点式」なんですよね。

ケニアの言葉で「ノープロブレム」を「ハクナマタタ」というそう。韓国語でいう「ケンチャナヨ」みたいなニュアンスのようで、人と人が助け合い、笑い合い、慰め合う姿に、とても励まされました。

なんとも不思議な明るさとパワーに満ちたエッセイです。

コメント

このブログの人気の投稿

まったく新しい映画体験に思うこと 4D映画「ハリー・ポッターと賢者の石」 #484

映画の公開20周年を記念して、「ハリー・ポッターと賢者の石」が初の3D化されました。体感型の4DXやMX4Dで上映されています。 映画を「配信」するサービスが増え、パソコンやスマホでも映画が観られるようになったいま、「劇場で観る楽しみ」を、最大限与えてくれる上映方法だと思います。 でも、なぜか、4D映画ってモヤッとしてしまう……。 クィディッチゲームの疾走感や、チェスの駒が破壊されるシーンの緊迫感は倍増されていたので、こうした場面の再現率、体感度は以前に比べてかなり上がってきたように感じます。 (画像はIMDbより) それでも、稲光、爆風や水滴など、ストーリーとのズレを感じてしまう。 むかし観た4D映画では主人公が「GO! GO!」と走り出すシーンで、スポットライトがピカピカと点滅していたんですよね。わたしの頭の中で、「パラリラ パラリラ~」という暴走族のバイクの音が再生されてしまいました。 そうしたストーリーとは関係のない効果は減り、洗練されてきた感じはするものの、やっぱりスッキリしないものは残るのです。 4D映画はなぜモヤるのだろうと考えていて、「誰の目線で映画を観ればいいのか混乱する」からかもしれないと気がつきました。 ここで、あらためて4D映画について説明しておきます。 4D映画とは、映画に合わせて光や風などの演出が施された、アトラクション型の「映画鑑賞設備」のことです。 2D映画でも、4D映画の設備で上映されなら、4D映画になります。今回わたしが観た「ハリー・ポッターと賢者の石」は、3D映画の4D上映でした。 日本で導入されている4Dシアターは2種類。韓国のCJ 4DPLEX社が開発した4DXと、アメリカのMediaMation社が開発したMX4Dです。わたしは今回、TOHOシネマズで観たのですが、導入しているのはMX4Dのほうでした。サイトによると、体感できる環境効果はこちら。 特殊効果 ・シートが上下前後左右に動く ・首元、背後、足元への感触 ・香り ・風 ・水しぶき ・地響き ・霧 ・閃光 なるほど、のっけからシートがジェットコースターのように揺れ、風が吹きつけ、地響きも、ふくらはぎに礫が当たるような感触も体験できました。 人間社会で虐待されながら育ったハリー・ポッターは、ハグリットと出会うことで初めて魔法の世界に触れることになります。 ホグワーツ魔

キャラクター名“画数グランプリ” 優勝したのは!?「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」 #515

劇場版「鬼滅の刃」が話題ですね。 校閲ガールであるわたしにとって、気になるのはストーリーでも、煉󠄁獄さんのかっこよさでも、興行収入でもありません。 漢字が多すぎ!!! ってことです。 たぶん、すべての校閲ガールや校閲ボーイは、トラウマとなる漢字を持っています。変換ミスや同音異義語を見落とした経験を持っているから……。一度やってしまうと、その漢字を見ただけで「ヒッ!」となります。特に画数の多い漢字はつらいんです。 なのに、 「鬼滅の刃」の登場人物は、全員画数多過ぎでしょ!!! 劇場版「鬼滅の刃」 無限列車編公式サイト 「その刃で、悪夢を断ち斬れ」劇場版「鬼滅の刃」 無限列車編 絶賛公開中!   主人公は竈門炭治郎。その妹は禰豆子。鬼殺隊仲間は、我妻善逸、嘴平伊之助。「鬼殺隊」という名前からすでに怖そうですよね……。ちなみに一度で変換できなくて、「おに」「ころし」「たいちょう」と入力したので、あの日本酒を思い出しました。 清洲城信長 鬼ころしパックが【全国燗酒コンテスト2020】お値打ち熱燗部門 金賞受賞(2年連続受賞)   そんな「鬼殺隊」最強の剣士・煉󠄁獄杏寿郎さんはやはり、漢字の難しさも最高レベル。さすがは炎の呼吸を使う炎柱です。たぶん「隊長」みたいな役職の人です。 今回の映画の敵は魘夢と猗窩座というヤツで、これまで炭治郎たちが戦ってきた鬼よりはるかに強いヤツらしい。文字だけ見ても強そうですもんね。その鬼を束ねている悪の総帥が鬼舞辻無惨。 読み方分かりませんね……? 手書きできませんね……? 「鬼滅の刃」漢字検定1級をとれたらすごいと思います。このアニメとのコラボグッズは、校正するの、大変そう……。 そこで、緊急企画 「画数グランプリ」を開催 したいと思います! 「漢字辞典online」というサイトにて、各キャラクターの名前の画数を確認してみました。 kanji.jitenon.jp 「竈」という漢字を検索すると、こんな感じで表示されます。 この「画数」を足し上げていくのです。さて、優勝したのは!? (表記は公式サイトを基にしています) * * * 第3位:鬼舞辻無惨 54画 第2位:竈門炭治郎 55画 僅差です! 「魘夢」なんて、「魘」だけで24画もありました。これはぶっちぎるのでは……と思いきや、2文字という名前が仇に。けっこうしぶとい強いヤツでしたが、こ

人生をやり直したい男の誤算が招くコメディ 映画「LUCK-KEY」 #298

名バイプレーヤーとして知られる俳優が、主演を務めるとき。その心中はドッキドキでしょうね……。 映画「ベテラン」や「タクシー運転手 約束は海を越えて」で味のある演技を披露していたユ・ヘジンにとって、初めての単独主演映画が「LUCK-KEY ラッキー」でした。 ☆☆☆☆☆ 映画「LUCK-KEY」 https://amzn.to/3watGNT ☆☆☆☆☆ <あらすじ> 売れない貧乏役者のジェソンは、将来に絶望して自殺を試みます。が、大家の侵入によって失敗。せめて身ぎれいになってからにしようと銭湯に行くことに。石けんを踏んで転倒した男の鍵をすり替え、男のフリをして暮らそうとしますが……。 原作は内田けんじ監督のコメディ「鍵泥棒のメソッド」。リメイク版の試写会で、観客が提案したタイトルが「LUCK-KEY」で、それがそのまま使われることに決まったのだそう。 ☆☆☆☆☆ 映画「鍵泥棒のメソッド」 https://amzn.to/3jEEotv ☆☆☆☆☆ ユ・ヘジンが演じるのは記憶喪失になった男「ヒョヌク」なのですが、ロッカーの鍵をすり替えられてしまったため、周囲には貧乏役者だと思われています。助けてくれた救急隊員の実家である食堂で働くことになりますが、刀さばきはすごいし、客さばきもうまい。だけど彼自身は俳優として成功し、親孝行しなければとマジメに努力します。 (画像はKMDbより) 一方、鍵をすり替えて逃げ出したジェソンの方は、豪勢な「ヒョヌク」の家にビックリ。贅沢三昧に自堕落に暮らし始めますが、隠し部屋で多くの銃を発見してしまいます。 実は「ヒョヌク」は、100%の成功率を誇る伝説の殺し屋だったのです!!! というお話。とにかくおかしな方へ、おかしな方へと話が転がっていく、コメディです。 (画像はKMDbより) 驚くのはユ・ヘジンの身体能力の高さ。趣味は登山と日曜大工だそうですが、いや、すごすぎやろというくらい、見事なアクションをみせています。 映画では、どう見てもおっちゃんなのに身分証は20代だったり、大部屋俳優から出世しちゃったり。 記憶は失っても、努力の仕方は覚えてるんですよね。 逆に、鍵をすり替えたジェソンは、夢はでっかく、だけど行動力はゼロという青年です。ふたりの対照的な生き方は、入れ替わっても続いてしまう。「幸運の鍵」をつかむには、という部分で、ちょっと身に