本を買う時、単行本派ですか? それとも文庫本派ですか?
いまなら電子書籍や、音声サービスもありますね。
わたしは単行本派なんですが、持ち歩くにはかさばるし、本棚でもかさばるし、おまけにお値段も文庫本よりちょっと高い。
それでも早く読みたい。文庫化するまで待てない!!!
そう思って単行本に手を出してしまいます。でも、お気に入りの作家さんの、好きな作品が文庫化されると、それも買ってしまうんですよね。
なぜなら、「解説」が読みたいから。
解説とは「基本はオマケ」と語る斎藤美奈子さんの『文庫解説ワンダーランド』は、文庫本に収録されている解説にスポットを当てた本です。
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『文庫解説ワンダーランド』
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夏目漱石に川端康成、松本清張に赤川次郎、チャンドラーにシェイクスピアと、古今東西の書籍が取り上げられています。
もちろん解説を書いている方々も、そうそうたる文化人なのですが、斎藤美奈子さんの軽妙・軽快な筆によってバッサリバサバサとかき分けられていき、気持ちがいいくらいです。
「論旨がわかりにくいこと」が特徴という、“知の巨人”小林秀雄は、「コバヒデ」とニックネームまで付けられています。
その小林秀雄の著書『モオツァルト・無常という事』は、批評美学の集大成とされているそうなんですが、解説を書いているのは江藤淳。
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『モオツァルト・無常という事』
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よりによって……という組み合わせですが、これは小林秀雄のご指名なのだとか。
本文を紹介し、解説を紹介した斎藤さん。
「お手上げ。わけがわからん」
となってしまうのです。(わたしだけじゃなかった!!!)という安心感が、胸いっぱいに広がりました。
斎藤さんが古典本の解説に求める要素は、大きく3つあります。
① 著者の経歴や本が書かれた時代背景などの基礎情報
② 読書の指針になるアシスト情報
③ いま読むべき意義を述べた効能情報
これら3つを踏まえた上で、さらに「攻めの解説」として、
④ 新たな読み方を提案するリサイクル情報
を挙げておられます。
現代作家の本になると、解説も仲のいい同業者だったりして、ウラの顔や裏話なんかが紹介されることもありますが。
解説だってひとつの作品。まさに見事なオマケのリサイクル方法だなと思います。
「批評としての芸」を批評する、画期的な一冊です。
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