「あたしの人生は、あたしのものだ」
過去の記憶を手放す。同情にNoと言う。誰かの悪意のはけ口にならない。
自分の人生を自分の手にするために、乗り越えることは、なんて多いんだろう。
町田そのこさんの小説『星を掬う』は、登場人物それぞれが、自分の人生を取り戻していく物語です。
痛みと絶望の果てに手にした星のかけらに、慰めをもらいました。
☆☆☆☆☆
『星を掬う』
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<あらすじ>
ラジオ番組の賞金ほしさに、母との夏の思い出を投稿した千鶴。ラジオを聞いた恵真という人物から、連絡を受け取るが、彼女は、自分を捨てた母の「娘」だと名乗っていた。元夫の暴力から逃げるため、恵真の住まいに避難することになった千鶴。母・聖子と再会するものの、母は若年性アルツハイマーを患っていた……。
ラジオ番組の賞金ほしさに、母との夏の思い出を投稿した千鶴。ラジオを聞いた恵真という人物から、連絡を受け取るが、彼女は、自分を捨てた母の「娘」だと名乗っていた。元夫の暴力から逃げるため、恵真の住まいに避難することになった千鶴。母・聖子と再会するものの、母は若年性アルツハイマーを患っていた……。
町田そのこさんは、『52ヘルツのクジラたち』で2021年本屋大賞を受賞されています。
この小説が虐待から逃れた少年の物語だったので、ちょっと覚悟していたのですが、『星を掬う』もやっぱりイタかった。
元夫による執拗なDV、支配的な母による抑圧、母に捨てられた娘と、娘に捨てられた母。それぞれに痛みを抱えた人たちが、同居生活を送ることになり、痛みに向き合うことを覚えていきます。
小学3年のとき、氷室冴子さんの作品を読んで小説家になりたいと思ったという町田そのこさん。わたしも「こんな物語を書きたい!」と、セコセコ書いていたことがあったので、すごく共感しました。家事と育児の合間を縫っての執筆って、尊敬しかない。
千鶴は、母との気持ちのすれ違いを究極的にこじらせてしまい、ついには人生も崩壊させてしまうんですけど。自分が自分の人生を生きていない。言い訳の材料として母に捨てられたこと、元夫のDVを利用しているんだと気付く辺りは、『嫌われる勇気』を思い出しました。
誰にだって不器用なところはあるはず。それは「親」だって同じ。キレイに取り繕うとするよりも、ちゃんと向き合って話すことで、関係の糸をほぐす手がかりが得られるのかもしれない。
「あたしの人生は、あたしのものだ」
こう宣言することで、心は強くなる。その先に続く道を信じたくなる小説でした。
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