先月お亡くなりになった中村吉右衛門さんといえば、わたしにとっては「鬼の平蔵」こと長谷川平蔵です。27年もの間、ドラマ「鬼平犯科帳」で長谷川平蔵を演じてこられました。
凜々しい立ち回りに、「火付け盗賊改方、長谷川平蔵である」という一喝の声。しびれるほどのかっこよさでした。
(画像リンクです)わたしはドラマより前に池波正太郎さんの小説で「鬼平」を知りましたが、すっかり吉右衛門さん節のイメージになりました。
火附盗賊改は、いまでいう「警視庁・捜査1課」みたいなお役所です。その裏組織「火龍改」が存在していた……という設定の小説が夢枕獏さんの『大江戸火龍改』。
江戸時代版の晴明か!?と思いきや、もっとどす黒い人間の欲を描いた物語でした。
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『大江戸火龍改』
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主人公の遊斎は、ロン毛の白髪を赤い紐で結んでおり、道服のようなものを着ています。夢枕獏さんの小説では、異界とつながる役目を負った人物は、異形の姿で描かれることが多く、遊斎もそんな妖しさを感じさせます。
お友だちはなんと平賀源内!
部屋には、角のある頭蓋骨とか、西洋から持ち込まれた謎の物体とかがあふれていて、それだけでもワクワクしてしまう。
与力(いまでいう刑事かな)の間宮林太郎や、飴売りで噂好きの土平の力を借りて、「普通ではない」事件を解決していきます。
3本の短編と、1本の長編が収録されているんですが、この長編の「桜怪談」がゾゾッとくるおもしろさでした。
シリーズ化してもおもしろそうな、濃いキャラクター揃い。でも、どちらかというとアニメ化されるといいなと感じます。
そしてこの本には、珍しく政治への憤りを綴ったあとがきが収められているのです。
2020年4月時点で69歳の夢枕獏さん。40年以上も小説を書いてきて、いまようやくスタートラインに立てたような気がする、と語っておられます。
この言葉、重く受け止めたい。
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