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『こいぬのうんち』#886


「自分はここにいても、いいのかな」

コミュニケーション不全が続くと、人はイライラしたり、焦ったりするのだそうです。その段階を過ぎると、襲われるのが不安な気持ち。

誰にも相手にされていないような不安な状態が続くと、自分の存在価値を自分で認められなくなってしまう。

コミュニケーションによる孤立を防ぐことができないかなと勉強する中で、「話を聞いてもらえない」ことによるストレスについて知りました。

「○○ができるから」

「○○が得意だから」

そんなスキル面ではなく、ただ存在を認めてもらうことができれば、もっと心は自由になれるんじゃないか。

韓国の童話作家クォン・ジョンセンさんの『こいぬのうんち』は、まさにそんな疑問に答えてくれる本です。

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『こいぬのうんち』 

(画像リンクです)

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『こいぬのうんち』は、第1回キリスト教児童文学賞を受賞した作品で、絵本として出版されているのは、1996年に子ども用として書き直されたものなのだとか。

主人公はもちろん、子犬の「うんち」です。

土やニワトリから、「役に立たない」とか「汚い」とか言われてしまう「うんち」。自分なんて誰からも必要とされないんだ……と落ち込んでしまいます。

季節が過ぎ、「うんち」に変化が訪れる瞬間。

大人が読んでもウルウルきちゃうのです。

コミュニケーションの不全とは、そこにいるけどもそこにいないことにされてしまうことです。こんな淋しいことはないでしょう。

生きるとは、人とつながるとは、どういうことなのか。

やわらかい絵と一緒に、心で感じることができる絵本です。

「書店で誰でもサンタになれる」プロジェクト「ブックサンタ」に参加した際、この本を贈りたかったのですが、店頭になかったのであきらめました。

版元には在庫があるようなので、子どもに読み聞かせをしている人に、ぜひ読んでみてほしいです。


「ブックサンタ」は、「厳しい状況に置かれている子どもたちに本を届ける」ことを目標に活動されているそう。子どもたちに贈りたい本を選んで購入し、そのままレジで「寄付します」と言うだけです。

最終受付は、12月24日なので、気になる方はサイトをチェックしてみてください。参加書店のリストもありますよ。



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