敬語の調べ物をしていて、何気なく開いた本が、狂気の本だった……。いい意味で、です。
わたしの「4月」は新人研修の日々でした。メールの書き方や、パワーポイントの使い方を教えるのは楽しいのですが、ひとつ、とても気が重い講義があります。
敬語のおけいこの時間です。
いまの時代、フラットな関係が支持されているのだから、いまさら敬語なんていらないんじゃないだろうか。
そんな思いを抱えつつ、それでも「必要な時の方が多いから」という要望を受けて研修を続けてきました。
「謙譲語」とか「尊敬語」とか、そんな分類はどうでもいい。自分の言動に使うのか、相手の言動に使うのかだけ覚えて!と、よく使うワードで練習します。
まぁ、研修ならこれでいいけど。
校正の場合は、指摘を出す際に「根拠」がいるため、いま四苦八苦しています……。
ずいぶん前に買ってあった北舘誠一郎さんの『敬語の疑問が全て解ける本』を開いてみたら、著者の経歴に、「公認会計士」とありました。
公認会計士さんが、敬語の本!?
なんでも30歳にして会計士試験に挑戦し、合格。会計ソフトの開発会社に勤務していたのに、今度は50歳で日本語研究の道に進まれたそう。
年中無休、一日平均10時間以上を研究にあて、完成させた本が『敬語の疑問が全て解ける本』なのです。狂気や……。
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『敬語の疑問が全て解ける本』
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「これって正しい敬語の使い方なんだっけ?」
それを確認したいとき。一番やってはいけないことは、ネット検索です。
ホントーーーーーーーーーーに、ダメ。ぜったい。
そう言いたくなるくらい、ネットの情報、特に就職関連サイトの「敬語指南」記事は当てにならなかったです。
「○○という言い方は間違っています。△△と言い換えましょう」
とある記事の、「△△」が間違ってるよ……ということが多々あります。こういうサイトを見て面接の準備をした人たちが、過剰な敬語を使っているんだな、と感じることも。
ある意味、とても残念な「広告置き場」としての記事にだまされはいけません、と言いたい。珍しく、こんなネガティブなことを言ってしまうくらい、今回の調べ物が大変だったのです……。
北舘さんの『敬語の疑問が全て解ける本』はというと、大量の関連本や国語審議会の文献を参考に、「敬語」の用法がまとめてあります。とくに、敬意の表し方に注目しているところがポイント。
読書用の本というよりも、研究書に近いので、決して読みやすい本ではないですが、「敬語に自信がない」という方は、ぜひ、チェックしてみてください。
「言葉の美しさ」というと雑なくくり方になってしまうけれど、スマートな表現はやはり美しいなと感じます。わたしが目指したいなと思うところも、ここ。
言葉ひとつで、誰かを傷つけることを知っているから。
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