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『タイム・スリップ芥川賞 「文学って、なんのため?」と思う人のための日本文学入門』#951


「歌は世につれ、世は歌につれ」といいますが、「文学は世につれ、世は文学につれ」ともいえるのかもしれません。

菊池良さんの『タイム・スリップ芥川賞 「文学って、なんのため?」と思う人のための日本文学入門』は、歴代の芥川賞から、“転換点”といえる作品を紹介した本。その作品が書かれた当時の日本を知ることで、より作品世界を味わえるようになっています。

こうして通して振り返ってみると、「文学は世につれ、世は文学につれ」ってホントにそうなんだなと実感しました。つまり、近代の歴史を振り返る本でもあるのです。

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『タイム・スリップ芥川賞 「文学って、なんのため?」と思う人のための日本文学入門』

(画像リンクです)

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1冊も小説を読んだことのない少年が、文学好きな博士と一緒にタイム・マシンに乗って、歴代の芥川賞受賞作家に会いに行く、というストーリー形式で進みます。

この、「タイム・マシン」と「少年と博士」という組み合わせは、完全に「バック・トゥ・ザ・フューチャー」。オープニングなんか、まさに!な幕開けでした。

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菊池良さんといえば、「世界一即戦力な男・菊池良から新卒採用担当のキミへ」で一躍有名になった方です。ネタはおもしろかったんですが、この“真顔”が怖かった……。


その後、めでたくWeb制作のLIGさんに就職。コンテンツ記事を制作されていたそうで、わたしが一番記憶に残っているのは、ゲームチェアの広告記事。当時、この“真顔”が怖かった……。


上の記事では「座るほうが楽」という結論が出ておりますけれど、5年以上経ったいま、もしかしたら結論は変わったかもしれないですね。

リモートワークをしている時、半分くらいは立って仕事をしております!

相変わらず「座るほうが楽」なんだけど、運動不足のため、お尻と足が疲れてしまう。適度に立って仕事をするようになりました。

ちなみに、アメリカ在住の友人によると、Google勤務の方はスタンディングで仕事をする方が多いそうで、理由は「座っていると、思考が止まるから」だそうです。さすがすぎる……。

閑話休題。

LIGさんを退職された菊池さん。またまた世間を騒がせたのが、『もし文豪たちが カップ焼きそばの作り方を書いたら』でした。文体模倣のおかしみを満喫できる本です。

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菊池さんは、小難しいことや当たり前として見過ごしてきたことを、「ユーモアあふれるコンテンツ」へと作りかえる達人といえると思います。『タイム・スリップ芥川賞』も、「小説を読む前にわかる」文学の入門書、と紹介されています。

文学に対して1ミリの知識もなかった少年が、博士と一緒に時代を旅することで、芥川賞受賞の瞬間や、作品を生み出す前後の作者を知り、日本の文化の変容を体験。

高度経済成長やポップカルチャー、インターネットが、純文学作品にも現われるようになっていく中で、その時代の社会における「新しい価値観」をみつけていくのです。

ふたりの旅には、小ネタも満載です。

中上健二がジャズ喫茶でコーラを飲んでいたり、村上龍と編集者の安原顯が飲んでいるバーのマスターが村上春樹だったり。

これだけネタが多い本だと、校閲を担当された方は大変だっただろうな……と、思わず尊敬の思いを抱きました。

校閲ガール(わたしの本業)として、とても気になったことがひとつ。

“博士は立ち上がって会計を済ませると、店を出てタイム・マシンに乗り込みました。”(1994年)


“博士は叫び、店員に飲み物の代金を投げ渡すと、少年の手を掴んで店を飛び出しました。”(1968年)


“博士は少年の手を掴み、お金をレジに叩きおいて、店を飛び出していきました。”(1970年)


博士の持っていたお金は、いつの時代のものなのでしょう……!?


「文学が苦手」という人に、とても入りやすい扉を開いてくれる一冊です。博士が何から逃げようとしているのか、ぜひ、本で確かめてみてください!

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