“お菓子は、生きるための必須の要素ではありません。でも人はいつの時代もどこの国でもお菓子を作り、食べてきました。それはおそらく、お菓子が「心を生かすもの」だから。”
お菓子、中でも「あんこ」が大好きなわたしとしては、大きくうなずいてしまう坂木司さんの言葉です。
坂木司さんの小説『和菓子のアン』でも、「心を生かすもの」としてお菓子が登場します。デパ地下の和菓子屋「みつ屋」を舞台とした、お菓子を巡るミステリーです。
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『和菓子のアン』
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高校を卒業したばかりの梅本杏子・通称あんちゃんは、特に将来の進路を考えたこともなく、これならできそうかも……という、わりと消極的な理由で「みつ屋」でアルバイトをすることに。
お店にいるのは、元ヤンの桜井さん、和菓子職人を目指す立花さん、店長の椿さん。見た目とは裏腹に雄叫びの上がるバックヤードの描写にクスリとさせられ、閉店後のデパ地下の様子にうなってしまう。
和菓子はもちろん、料理の世界は「季節感」が強く打ち出されます。梅雨の時期の涼しげな和菓子、秋の初めに並ぶこっくりした味、どれもおいしそうで、たまらん物語でした。
現在までに3巻が出ています。
第1巻:和菓子のアン
第2巻:アンと青春
第3巻:アンと愛情
タイトルを見てお分かりのように、思いっきり『赤毛のアン』を意識した展開ですね。
季節の移ろいと一緒に、あんちゃんの成長を感じられるストーリー。
わたしにとって和菓子は、ホッとしたいときに選ぶお菓子のように思います。クリームたっぷりの洋菓子や、歯ごたえも楽しみたい焼き菓子は、気分を上げたいときかも。
その、和菓子に込められた意味と一緒に、ゆっくり読みたい小説です。もちろん「心を生かすもの」であるお菓子とお茶もお手元に。
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