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実力派俳優の凄みにふるえるノワール劇 映画「ファイ 悪魔に育てられた少年」#267

2018年の第71回カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞した「万引き家族」を観た時、善悪の基準は親の影響なんだなという印象を強く持ちました。 https://note.com/33_33/n/n71ccf4f1fca2 お店に置いてある商品は、お店のものなのか、自分が持っていっていいものなのか。 まだ判断力のない子どもに、それをどう教えるかによって、子ども自身が作り上げる世界は変わっていきます。 「ファイ 悪魔に育てられた少年」もまた、子どもの世界の認識の仕方を考えさせられる映画でした。 ☆☆☆☆☆ 映画「ファイ 悪魔に育てられた少年」 DVD Amazonプライム配信 (画像リンクです) Netflix配信 https://www.netflix.com/title/80165875 ☆☆☆☆☆ <あらすじ> 5人の「お父さん」に育てられた17歳の少年、ファイ。「お父さん」たちの仕事が、人に胸を張って言える職業ではなさそうな気配を感じつつ、逆らうことができません。新しい仕事を手伝うことになったファイは、自分の生い立ちの秘密に気がついて……。 この映画は、なによりファイを演じたヨ・ジングがとてもよかったです。2013年の韓国映画評論家協会賞や青龍映画賞などで新人賞を総なめにしています。彼が演じたのは、「お父さん」たちのことが大好きなのに、手伝わされる仕事は好きになれないという役。 学校へ通う代わりに、ピッキング、ドライビング、銃の扱いなど、あらゆる犯罪スキルを教え込まれていたのですから。 ファイに技術を仕込んだ「お父さん」役も豪華です。 迫力たっぷりのキム・ユンソク、やさしく懐柔しようとするチャン・ヒョンソン、わたしの大好きなチョ・ジヌンは、ちょっと頼りない「お父さん」でした。 「映画は父を殺すためにある」とは、宗教学者の島田裕巳さんの言葉ですが、エディプス・コンプレックスの究極の形といえるかもしれません。 韓国での解説記事を読んでいて知ったのですが、映画の冒頭で、キム・ユンソクパパがある判断をします。その時、アップになるのが、視覚障害者のネックレスです。 それになんの意味があるのかと思ったら、パパと出身が同じであることに気づいたことを示しているのだそう。 観る度に印象が変わりそうな映画だなと思っていましたが、まだまだ気づいていない伏線があるのか

タップのリズムで結ばれた絆の行方 映画「スウィング・キッズ」 #227

打楽器には心を躍らせる魔力がある。 韓国の伝統芸能である農楽は太鼓や鉦を打ち鳴らしながら踊る音楽です。リズムで会話する感じがすごく好き。魔力にのせられてしまいます。 一番盛り上がるのは「ヨルトゥバル」です。帽子のてっぺんに長ーい白い紐をつけてグルングルン回しながら飛び回るんです。 「ヨルトゥバル」とは「12歩」という意味。昔は先に刃物をつけて回しながら攻撃したとも言われているそうです。いや、確かに近寄れない。笑 農楽は、「風流遊び」を意味する「プンムルノリ」とも呼ばれています。曲が進むうちに心臓の鼓動にシンクロしていくんですよね。よく分からないまま踊り出したくなるし、ものすごく高揚する。 太鼓のような楽器を使わず、自らの身体を楽器とする音楽ならタップダンスがあります。 タップダンスの起源は、白人が黒人の集まる場でのドラムを禁止したため、かわりに足を踏み鳴らして音を出したことらしいです。虐げられた者たちの解放の音楽ということか。 打楽器には心を躍らせる魔力がある。 映画「スウィング・キッズ」を観て、強く感じました。 ☆☆☆☆☆ 映画「スウィング・キッズ」 DVD (画像リンクです) Amazonプライムで配信: https://amzn.to/36pVR4p ☆☆☆☆☆ <あらすじ> 1951年の朝鮮戦争当時、韓国の南部にある巨済島の捕虜収容所に新しく赴任してきた所長は、対外的なイメージアップのために戦争捕虜でダンスチームを結成するプロジェクトを計画する。ブロードウェイのタップダンサーだった黒人下士官ジャクソンは「東洋人にタップダンスは無理」と反対するが、オーディションをすることになり……。 映画の一番の見どころはタップダンスのシーンです。寄せ集められたメンバーは。 ・トラブルメーカーで、北朝鮮軍捕虜のロ・ギス ・行方不明になった妻を捜す民間人捕虜のカン・ビョンサム ・栄養失調で心臓が悪い中国人捕虜のシャオパン ・4カ国語を駆使する無許可通訳の女の子ヤン・パンネ 言葉も通じない、イデオロギーも違う、敵と味方の関係にあるメンバーですが、ジャクソンが繰り出すタップのリズムの虜になってしまうのです。 ジャクソンを演じたのはジャレッド・グライムス。ブロードウェイミュージカルの最優秀ダンサーに授与される「アステア賞」の受賞者です。 ガチのプロのエンターテイナー。 彼に対抗するロ

“マブリー”の人間味に惚れる 映画「犯罪都市」 #160

“マブリー”の愛称で親しまれている俳優のマ・ドンソク。出世作といえば、2016年に公開された「新感染 ファイナル・エクスプレス」です。 ゾンビがかわいそう!? 映画「新 感染 ファイナル・エクスプレス」 #161   ソウルからプサンに向かう特急電車で発生したゾンビによる大パニックから身重の妻を守る夫を熱演し、大ブレイクしました。 三白眼・コワモテ・マッチョという、恐怖の三拍子を備えた外見を活かし、ドラマや映画での活躍が続いています。 彼の魅力は、不愛想でぶっきらぼうで武闘派な印象なのに、弱き者にはとことん優しい姿を見せてくれるところだと思います。だから姓のマ+ラブリーをミックスして、“マブリー”なんて呼ばれちゃうんですね。 警察と地元ヤクザ、中国マフィアが繰り広げる三つ巴の仁義なき戦いを描いた映画「犯罪都市」では、頼れる先輩を演じていました。 ☆☆☆☆☆ 映画「犯罪都市」Amazon https://amzn.to/3xgQb5q 公式サイト http://www.finefilms.co.jp/outlaws/ ☆☆☆☆☆ <あらすじ> 舞台はソウル南部のチャイナタウン。勢力を二分し、対立する毒蛇組とイス組ですが、マ・ソクトには頭が上がりません。人柄と腕っ節の強さで商店街の人々にも親しまれている刑事です。 そこへ中国の犯罪集団「黒竜組」が進出。パワーバランスが崩れ、ヤクザ同士の抗争が始まります。マ・ソクト率いる警察の強力班は一掃を試みますが、若手刑事が大けがを負う事態に。この争いを止めることはできるのか……。 包丁を振り回してわめくヤクザを 一撃で 黙らせ、取り調べに応じない容疑者を 一撃で その気にさせ、相撲取りのような見張り役を 一撃で 気絶させる。なのに、商店街の屋台で働く少年には支援を欠かさない。 そんな“コワモテマッチョだけど根は優しい”=マ・ドンソク像を確固たるものにした映画といえるかなと思います。 この映画は実際に韓国・ソウルの九老区で起きたマフィアの抗争をベースにしているそうです。地図で見ると、明洞やカロスキルのある江南といくらも離れていないのが分かりますよね。この辺りは現在、デジタル産業団地になっているそう。 中国北東部から韓国に移住してきた朝鮮族は、平和に事業を営む者たちがいる一方で、腕力に頼る者たちも出てきてしまいます。その時代を描いている

なめたらあかん! アップデートされた妻を守る方法 映画「無双の鉄拳」 #159

現実社会では「アンガーマネジメント」が注目されていますが、フィクションの世界なら話は別。弱気でダメダメでモジモジしたキャラクターが怒りを爆発させるシーンはカタルシスを感じさせてくれます。  「新感染 ファイナル・エクスプレス」のヒットで日本でも知られるようになったマブリーことマ・ドンソクは、2017年は1本、2018年には4本、2019年には5本とこの数年で一気に出演作が増加(日本での公開)。 おまけにドラマにも出演し続けているんだからすごい。ハリウッドへの進出も決まっている、いま注目の俳優です。 (画像はKMDbより) マブリーの特徴は、なんといっても体格です。身長178cm、体重100kg。もともとボディビルダーだったので、スーツを着ていても胸の筋肉が盛り上がっているのが分かります。腕回りは50センチあるそう。 武闘派のイメージがありますが、「神と共に 第二章:因と縁」では“屋敷神”の役だったので、人間に対して暴力を振るえない、正反対のイメージのキャラクターを演じていました。 「神と共に 第二章:因と縁」に隠された、地味に深い暗号   そうした演技の幅の広さが、制作陣からも信頼を集める理由なのでしょうね。 映画「無双の鉄拳」は、「妻、命!」という人の好いおっちゃんから一気に武闘派に変わる男でした。 ☆☆☆☆☆ 映画「無双の鉄拳」 DVD (画像リンクです) Amazonプライム配信 (画像リンクです) ☆☆☆☆☆ <あらすじ> 愛する妻と、仕事仲間と共に穏やかに暮らしているドンチョル。妻の誕生日に、カニ漁船に投資したことを話し、怒らせてしまいます。帰宅すると、部屋が荒らされ、妻は消えていました。家出か? 誘拐か? そこにかかってきた電話の主は、金を渡すから妻のことは忘れろと提案。話の通じない犯人にも、動きのにぶい警察にもキレたドンチョルは自ら妻を探そうと動き出し……。 普段は妻に頭が上がらず、魚市場のボスにもペコペコしているドンチョル(マ・ドンソク)ですが、かつては裏社会で名を知られた存在でした。一度キレたら最後、誰にも止めることできない「雄牛」としてです。映画の原題「성난황소」とは、「怒れる雄牛」のこと。 「なめてんじゃねえぞ!」とばかりに怒れるマブリーへとスイッチが切り替わってしまえば、もうそこは独壇場です。 ボクシングと柔道とプロレスを組み合わせたような武

チャラ男王子の成長物語 映画「王宮の夜鬼」 #98

ドラマ「私の名前はキム・サムスン」で、「心に傷を持つ御曹司」を演じ、人気俳優となったヒョンビン。今年は主演映画が2本、日本で公開されています。 ひとり「ヒョンビン祭り」と称して対照的な映画を続けて観てみたら、ヒョンビンが魅力的に見える条件がなんなのか分かったんです(ような気がするんです)。 キーワードは “強い女” です。 昨日の記事では「ザ・ネゴシエーション」でヒョンビンが演じている犯罪組織のリーダーと、女性ネゴシエーター(ソン・イェジン)との対決において、“強い女”がヒョンビンの演技力を高めているという話をしました。 映画「ザ・ネゴシエーション」 https://note.com/33_33/n/nd13ccb08e6d1 2作目は「王宮の夜鬼」です。韓国では2018年に公開され、日本ではこの9月に公開が始まりました。 原題の「창궐(チョンゴル」は、”荒れ狂う”ことを意味します。韓国版ゾンビ“夜鬼(やき)”が荒れ狂う中、“人間vs.ゾンビ”、そして“人間vs.人間”の戦いを描いたパニックアクション映画です。 ☆☆☆☆☆ 映画「王宮の夜鬼」 DVD(画像リンクです) Amazonプライム配信 ☆☆☆☆☆ <あらすじ> 物語の舞台は朝鮮時代。謎の疫病が発生し、病に感染した「夜鬼(やき)」が暴れまわる世界です。清から帰国した王子イ・チョン(ヒョンビン)は、武官らと協力しながら王宮に向かいます。 一方、国王の側近キム・ジャジュン(チャン・ドンゴン)が、夜鬼を利用してクーデターを企んでいることが発覚。イ・チョン王子はキム・ジャジュンの暴走を止められるのか!? 王子様のヒョンビンと対立し、王位を狙うキム・ジャジュンを演じたのは、韓流四天王のひとり、チャン・ドンゴンです。濃い~顔立ちが印象的な俳優で、これまでに5回、青龍映画賞を受賞しています。韓流映画ブームの火付け役となった「友へ チング」や、「ブラザーフッド」など、多くの映画で主演を務めています。 ☆☆☆☆☆ 映画「ブラザーフッド」 DVD(画像リンクです) ☆☆☆☆☆ 「王宮の夜鬼」も「インサイダーズ/内部者たち」や「神と共に」シリーズ同様、韓国のウェブ漫画が原作です。 「王になんて、なりなくない。女と一緒に清に戻りた~い」って言ってるナイーブな王子様が、民と協力してゾンビに立ち向かう過程を通して王としての自分