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強烈アクション+コメディのバランス感 「コンフィデンシャル 共助」 #99


ひとり「ヒョンビン祭り」の3本目は、「心に傷を持つイケメン御曹司」役の多かったヒョンビンが、アクション俳優へと飛躍するきっかけとなった映画「コンフィデンシャル 共助」 です。

冷静で有能な北朝鮮の刑事(ヒョンビン)と、熱血漢で人情派な韓国の刑事(ユ・ヘジン)との、「南北共助捜査」を描いたアクションエンタテインメント。

☆☆☆☆☆

映画「コンフィデンシャル 共助」

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☆☆☆☆☆


・韓国で2017年上半期No.1の興行成績。

・カナダで開催された第21回ファンタジア国際映画祭で最優秀アクション賞を受賞。

・北朝鮮大佐役のキム・ジュヒョクが第1回THE SEOUL AWARDSで助演男優賞を受賞。

こんな華々しい成績からも、人気のほどが分かりますよね。今年9月に日本で公開された「王宮の夜鬼」と同じ、キム・ソンフン監督作品です。


「コンフィデンシャル 共助」の格闘シーンには、ロシア特殊部隊の格闘術“システマ”を取り入れたそうで、トイレットペーパーが武器になったり、車にハコ乗りしてカーバトルしたりと、とにかく派手なアクションが見どころ。

キム・ソンフン監督はきっと格闘技ファンだと思います。おまけに北朝鮮のパソコンのOSは「赤い星=北朝鮮の国旗」と、芸が細かい!

<あらすじ>
南北の高官級会談が急きょソウルで開催されることに。実は、北朝鮮の犯罪者がソウルに逃げ込んだとの情報があり、歴史上初となる南北共助捜査がおこなわれることになったのです。
国家情報院の依頼を受けて、北朝鮮刑事を見張ることになったカン・ジンテ。やってきた北朝鮮の刑事イム・チョルリョンは、腕っぷしは強いけれど無口な男で、単独行動したがる上に、スマホを盗聴していることが分かり、対立姿勢を深めてしまいます。
チョルリョンの真の目的は、北朝鮮で印刷されていたアメリカドルの偽札の銅版を取り戻すことと、銅版を持ち出す際に妻を殺した上司チャ・ギソンへの復讐でした。相性最悪のふたりは、協力できるのか!?


ポスターを見てお分かりのとおり、ヒョンビンのバディとなるのはおっちゃん(演じているユ・ヘジン韓国の実力派俳優)です。対立相手は北朝鮮の元大佐であるキム・ジュヒョクで、こちらもおっちゃん。

家に帰れば鬼嫁はいますが、ここはあくまで物語の傍線。メインラインに「おっちゃん」しかいないということは……。


ヒョンビンを輝かせてくれる“強い女”が足らない!


もちろん、ヒョンビンのアクションシーンは目を見張るものがありましたし、武骨で壁のある人物像は、「復讐に燃える男」を感じさせてくれます。新たなヒョンビンを見た!という感動はありました。

「王宮の夜鬼」もそうでしたが、この映画もいろんな映画からいいとこどりしたような要素が多めなんですよね。

・南北対立

・刑事ものによくある危険性

・バディものによくある対立

・リアルなアクション

・派手なカーバトル

・家族愛

これだけでおなか一杯になりそうなのに、なんと「コメディ」が入っているんです。

重いシーンがヒョンビンの担当だとすると、コミカルな演技で笑わせてくれるのはユ・ヘジンです。このバランスは、人によって評価が分かれそうです。


わたしは、「うーん」でした。


映画冒頭の戦闘シーンは迫力満点で、一気に映画の中に引きずり込まれた感じがしたのですが、ユ・ヘジンの演技がおかしすぎて、ちょっとズレてしまうんです。

ふたりが車の中で言い合うシーンでは、ヒョンビンの顔に明らかに“笑い”が残ってました。気持ちは分かる。笑

ラストシーンは、ぜひ、「工作 黒金星(ブラック・ヴィーナス)と呼ばれた男」と比較してみてください。涙腺を刺激するか、笑いのスイッチを入れるかで、鑑賞後がぜんぜん違うんだなーと感じました。

https://note.com/33_33/n/n6436156a3518


同姓同名なのでうっかり間違えそうですが、ハ・ジョンウ主演の「トンネル 闇に鎖された男」のキム・ソンフン監督とは別人です!

https://note.com/33_33/n/ndd98c1445f60


韓国人は同姓同名が多いので、こういう時に困りますよね。「キム・ソンフンX」とか、「キム・ソンフン☆ピンク」とか、区別できるものがほしいと思ってしまいました。


ロシアン格闘技“システマ”は、キアヌ・リーブス主演の映画「ジョン・ウィック」にも取り入れられているそう。ちょうどシリーズ第3弾「ジョン・ウィック:パラベラム」が公開されたところので、見比べてみるのもいいかもしれません。

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映画情報「コンフィデンシャル 共助」124分(2017年)

監督:キム・ソンフン

脚本:ユン・ヒョンホ

出演:ヒョンビン、ユ・ヘジン、キム・ジュヒョク、ユナ、チャン・ヨンナム、イ・ドンフィ

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