東西冷戦下に建設された巨大な壁「ベルリンの壁」は、1989年11月9日の夜、破壊されました。東ドイツが発表した西側への旅行規制緩和措置が開放へとつながり、壁をつるはしで壊す人たち、上に登って喜ぶ人たちを当時のニュースで見た記憶があります。
ベルリンは第二次世界大戦の終結後、米英仏ソの共同管理に置かれていたことから対立が激化し、冷戦によって壁が建設されることになりました。
「ベルリンの壁」崩壊によって、地球上に、都市を東西に分けていた壁はなくなりましたが、いまだに国家が分断されているところがあります。
朝鮮半島です。
国家の分断による「南北対立」は、韓国映画においても重要なテーマになっています。
日本で韓国映画ブームの発端となったのは、日本で2000年に公開された「シュリ」でしょう。韓国に潜入した北朝鮮工作員と、韓国諜報部員との許されざる恋と壮絶なアクションは、初めて観た時にびっくりしました。そして、韓国映画ファンになったんですよね。
「シュリ」で韓国の秘密情報部員を演じたハン・ソッキュは、2013年に公開された映画「ベルリンファイル」でも韓国国家情報局員を演じています。良くも悪くもハン・ソッキュは、一生“アカ”の役はできないでしょうね……。
(画像は映画.comより)
「ベルリンファイル」はベルリンを舞台に、世界各国のスパイが暗躍するスパイアクション映画です。舞台がベルリンな理由は、冷戦時代に最もスパイが多かった街だからだそう。スパイを象徴する街になっているのかーと、ちょっと複雑な気分です。
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北朝鮮諜報員ジョンソンは、アラブ組織との武器取引現場を韓国にかぎつけられ、銃撃されてしまう。情報漏洩を疑っていたところに、妻の二重スパイ疑惑が浮上。彼女の行動を追ううち、自身も巨大な陰謀に巻き込まれていることに気づく。韓国のエージェント、CIA、モサド、ドイツの諜報機関までが事態に介入し、ジョンソンは徐々に追い詰められていく。
北朝鮮の諜報員ジョンソンを演じているのは、「神と共に」のハ・ジョンウです。
重量感のあるアクションで、韓国のエージェントを演じるハン・ソッキュと渡り合っています。
(画像は映画.comより)
そのせいか、どうしても思い出してしまうのが「シュリ」のハン・ソッキュ。この映画はハン・ソッキュのフィルモグラフィー史上、初めてスタッフロールで「2番目」に登場する作品なのです。
アクション映画の世代交代!?ともとれますが、リュ・スンワン監督は、脚本を固めていた段階で俳優が決まっていなかったからだと語っています。ハン・ソッキュありきであれば、もっと違った展開になっていたのかもしれないなー。
メガホンをとったのは、「生き残るための3つの取引」などアクション作品で人気のリュ・スンワン監督。昨日のnoteで「10人の泥棒たち」のことを「大人数が多言語で話している映画」と紹介しましたが、「ベルリンファイル」も国際的です。
韓国語、朝鮮語(ピョンヤン訛り)、英語、ドイツ語、アラビア語?が出てきます。
韓国で公開された時に話題になったのが「ピョンヤン訛り」だそう。
関西人のわたしは、関西人でない俳優が関西弁で演じるのを見るとムズムズしてしまうんですよね。それと同じらしく、「なにを言ってるのか分からない」「ぎこちない」とディスられていたようです。笑
特に、北朝鮮の凄腕バカボンボン役のリュ・スンボムが標的になっていたようですが、この人は監督の弟なんですよね。笑いながら人を殺せる、一番怖いタイプの役を演じています。
(画像はKMDbより)
映画の中で一番“北朝鮮の人”のように見えた人物は、チョン・ジヒョンが演じるジョンヒ(ハ・ジョンウの妻)とのこと。このふたりは、「暗殺」で“ニセ夫婦”のフリをして危機を脱出しています。
ハ・ジョンウが演じるジョンソンは、無口で不器用で不愛想、でも妻を想う気持ちは本物。だけど伝わらないんですよね。ふたりの間には、言葉にして語るというコミュニケーションがなかったから。
信じたいけど、信じられない。
スパイにとって誰かを、何かを信じるということは、命をかけることになります。そんな公私の間で揺れるスパイの苦悩をうまく演じていました。
妻のために危地に向かおうとするハ・ジョンウに、ハン・ソッキュが尋ねます。
「なぜ、そんなことまでするのか?」
「妻だからだ」
逆に、ハ・ジョンウもハン・ソッキュに尋ねます。
「なぜ、手伝ってくれるんだ?」
「そういう仕事だからだ」
「シュリ」から約15年。ハン・ソッキュの役割が変わった記念碑的な映画だと思います。
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