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無実の男がえん罪を叫ばなかった理由に泣く 映画「7番房の奇跡」 #301


映画「7番房の奇跡」は、冤罪によって収監された男の物語です。実際にあった事件を基にしていますが、おかたい社会派ドラマではなく、父と娘の絆を描いたハートフルな映画でした。

韓国では観客動員が1200万人を突破する大ヒット。韓国のアカデミー賞といわれる大鐘賞で、主演男優賞など4冠に輝きました。

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映画「7番房の奇跡」
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<あらすじ>
知的障害のある父ヨングと娘のイェスンはふたり暮らし。ある日、ヨングが女児を誘拐・殺害したとして逮捕されてしまう。ヨングの罪状を知った囚人や刑務所のチャン課長はヨングを虐待。しかし、対立するグループから命を助けられた班長は、ヨングとイェスンを会わせるためにある計画を思いつく。一方、チャン課長はヨングの犯罪に疑いを持ち……。


映画のタイトルにある「7番房」とは、ヨングをはじめとする囚人たちが収監されている部屋の番号です。原題は「7番房の贈り物」で、どちらかというと、こちらの方が内容に合っているかな。

死刑判決を受けたヨング。同室の仲間たちと、彼の娘によって、無実が明らかになるけれど……、というお話です。

無実の罪で死刑判決を受けた囚人の物語といえば、「グリーンマイル」を思い出します。

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映画「グリーンマイル」
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不思議な力を持つ死刑囚のコーフィに、刑務所の看守ポールたちは脱獄を勧めます。が、コーフィはそれを断ってしまう。

「7番房の奇跡」でも、死刑執行の日程が決まったという連絡を受け、同室の仲間たちが脱出を企てます。これがまた、夢のある脱出劇なんです。荒唐無稽なんだけど、ファンタジック。

当のヨングはよく分かっていないのですが、理解していたとしても、彼は脱出を選ばなかったのではないかと思います。娘のために一緒にいたいけれど、娘のために一緒にはいられない。

その理由に、思わずこぶしを握ってしまう展開です。

とにかく娘のイェスンちゃんを演じたカル・ソウォンちゃんがかわいい。オーディションでは全然ダメで落とされる予定だったのが、「素人っぽくていいんじゃなーい」という イ・ファンギョン監督の一声で決まったのだとか。

(画像はKMDbより)

知的年齢が6歳の死刑囚イ・ヨングを演じたのはリュ・スンリョン。ブラックコメディ「エクストリーム・ジョブ」や、ゾンビ時代劇「キングダム」にも出演しています。この3つだけでも、だーいぶ印象が違う役柄です。



7番房の仲間たちも名優ぞろい。班長役のオ・ダルスは「1億俳優」の称号を贈られた名優です。多くの映画に出演していますが、アクションコメディ「ベテラン」の班長役もよかったなー。こちらの“班長”は、警察組織の役職ですが。


ちょっと鬱々とした時。気分が晴れない時。少しでも涙を流すと、デトックスになるのかすっきりすることがありますよね。少しのつもりが大量に出ちゃうこともあるけど。

泣きたくなるような原因を、あれこれ考えて思い詰めて泣くと、しんどいです。そんな時はぜひ、映画で泣きましょう。この映画、自然と大量に涙が出ますよ。

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