韓国のWebマンガ原作、今年1月からケーブルテレビ局で放送され、日本でもNetflixで配信中の「梨泰院クラス(イーテウォンクラス)」。
父の敵を取り、韓国一の外食企業となることを目指すセロイと彼のチーム「タンバム」の成長物語です。
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ドラマ「梨泰院クラス」
https://www.netflix.com/title/81193309
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高校3年生のパク・セロイは、転校先でいじめを目撃。黙っていられず、チャン・グンウォンを殴ってしまいます。グンウォンは、父が勤める「長家」グループの御曹司でした。彼の父チャン・デヒに土下座を求められますが、これを拒否。セロイは退校処分を受け、父は会社をクビに。それでも「信念を貫いた息子が誇らしい」と語る父でしたが、グンウォンが起こしたひき逃げ事故で父が死亡。怒ったセロイは再びグンウォンを殴り、刑務所に行くことに……。
パク・セロイを演じるのは、パク・ソジュン。一目見ただけで「でかっ!」と分かる彼は身長186cmという体格です。髪型が特徴的でした。
デヒの計略によって前科者となってしまったセロイは、同じような問題児を集めて居酒屋「タンバム」をオープンさせます。が、スッカーンと閑古鳥が鳴く状態。やっべーという状況を救ってくれたのが、パワーインフルエンサーとして活動していたイスでした。
イスを演じたキム・ダミは、これがテレビ初出演で初の主役。パク・ソジュンと並ぶとめっちゃ小柄に見えますが、プロフィールを見ると「身長170 cm」って書いてる……。
イスと友人のグンス、ギニア出身で父を探しに韓国に来たというトニーが加入したことで、勢いに乗っていく「タンバム」。一方、「長家」のオーナーであるチャン・デヒは、あの手この手を使って潰しにかかってきます。
韓国ドラマの復讐劇に共通するポイントは、次の3つです。
・親の敵が商売の敵でもある
・立身出世を目指す中の困難を描く
・出生の秘密がある
お金、学歴、出自によって貶められ、不幸のどん底からはい上がっていく主人公という点で、「梨泰院クラス」と共通していたのが「製パン王キム・タック」というドラマでした。
ただし、「製パン王キム・タック」の主人公タックと「梨泰院クラス」の主人公セロイの成長のあり方はまったく違いました。
「製パン王キム・タック」が韓国で放送されたのは2010年。「梨泰院クラス」とは10年の違いがあります。その間に、理想的なリーダーは、特別な才能や突出した能力を持つ孫悟空が大活躍する「ドラゴンボール」タイプから、それぞれの得意分野を持つ仲間たちが能力を発揮して、リーダーを支える「ワンピース」タイプへ。そんな時代の変化を如実に感じるドラマです。
ふたつのドラマの差が、大きく出たのが料理対決の場面でした。
「製パン王キム・タック」で、パルボンベーカリーに弟子入りしたタックとマジュン。卒業試験ともいうべきテストを受けることになります。お題は「イースト菌を使わずにうまいパンを作ること」。先に答えを言ってしまうと、このドラマの中では「不可能」が正解でした。
このお題に対し、タックは手当たり次第にパンを作ります。イースト菌の代わりに発酵食品を入れたらどうかと考えて、キムチを入れたりもしていました。そうして「できませんでした!」と答えるのです。
もう1人の試験生、タックの異母弟で、彼に対抗心を燃やすマジュンは、ズルをします。そしてパルボン師匠から「お前の頭の中には、挑戦ではなく試験に勝つことしかない」と、落第を言い渡されてしまう。
一方で、「梨泰院クラス」の料理対決はというと。
出場するのが主人公のセロイではないんです!
お店で料理を担当しているヒョニがテレビでの対決に出場。「長家」側が仕掛けたズルの心理作戦にも、セロイは応援しているだけ……。
このドラマにおいて、セロイは経営者です。マーケティングはイソが、料理はヒョニが、客さばきとケンカはスングォンが、と、チームメンバーのそれぞれが最善を尽くして自分の仕事をするだけなのです。
セロイがやることは、決断して、責任をとること。
これが現代のリーダーなのですよね。
「長家」を創業したチャン・デヒは、「家族を飢えさせないために」必死に働いてきたと語ります。それが、「人を大切に、信頼を大切に」を掲げる「タンバム」と対決することになる。商売の目的の変化にも、韓国社会の成熟を感じました。
父の無念を晴らし、「長家」を超えることだけを目標に、何事にも動じないセロイ。そんな彼を一途に愛するイス。「社長の夢は、わたしが叶えてあげる」と語る姿にもやはり、時代の変化が見えますね。
もうひとつ。おもしろいなと思ったのは、イスをはじめとする女性陣がピンヒールを履いていないことでした。これまでのドラマなら、セロイの初恋の人で、「長家」で働くスアにはピンヒールを履かせたはず。それがずっと「ローファー」なんですよね。
起業したばかりの状態から、成長フェーズ、投資を受けるフェーズと、事業の成長過程を体感できる点も見どころです。
「俺の価値をお前が決めるな」
「逃げてもいいよ。またやり直せばいいから」
やられたらやり返すでは終わらない、自らの人生哲学に忠実なセロイの言葉に、励まされること多し。どうせ働くなら、「長家」より「タンバム」の方が楽しそう。そんなチームを作りたいと感じたドラマでした。
「梨泰院クラス(イーテウォンクラス)」はNetflixで配信中です。
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ドラマ「梨泰院クラス」
https://www.netflix.com/title/81193309
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ドラマ情報「梨泰院クラス」全16話(2020年)
演出:キム・ソンユン
脚本:チョ・ガンジン
原作:チョ・ガンジン(ウェブトゥーン)
出演:パク・ソジュン、キム・ダミ、ユ・ジェミョン、クォン・ナラ
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