「愛の反対は憎しみではない。無関心だ」
マザー・テレサはそう言って、 無関心であること、傍観者であることを批判しました。
「でも、神様は僕に関心持ってくれてるのかよぉぉぉ! 母さんのことも、父さんのことも、助けてって祈ったのに聞いてくれなかったじゃないかよぉぉぉぉ!」
そんな心の傷を負った男は、ひとり孤独な戦いを続ける男に対して“傍観者”でいられるのか?
映画「ディヴァイン・フューリー/使者」は、格闘技のチャンピオンがエクソシスト(悪魔祓い)と出会うという異色のバディものです。
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映画「ディヴァイン・フューリー/使者」
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公式サイト
http://klockworx-asia.com/divinefury/
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子どもの頃に事故で父を亡くし、神への信仰を失ったヨンフ。総合格闘技の世界チャンピオンになった彼は、ある日、右手に見覚えのない傷ができていることに気づく。傷について調べるうち、バチカンから派遣されたエクソシストのアン神父と出会ったヨンフは、傷が聖痕だと知らされ……。
ムキムキの肉体美を誇りつつ、内面では神を恨み、悪魔に攻め込まれて消耗するチャンピオン・ヨンフを演じているのはパク・ソジュン。インタビューでは「もう少し身体を作り込めばよかった」と語っていましたが、いやいや、どうして、もう十分。でも、ちょっと細身なのかな。
(画像はKMDbより)
今年は「梨泰院クラス」の大ヒットで、日本でも顔を知られるようになりましたね。特にあの髪型。印象に残ります。
パク・ソジュンはドラマで人気となり、映画にも進出した俳優です。実は「パラサイト 半地下の家族」にも出演していたんですが、気づきましたか?
(画像はKMDbより)
チェ・ウシク演じる半地下家族の長男に、家庭教師をしないかと持ちかけた友人です。水石を持ってきた先輩! 思えば、あの家族の運命を変えた人物ともいえますね。
そのチェ・ウシクも、「ディヴァイン・フューリー」に出演していますが、今回はちょい役。とはいえ、とても重要な役どころなのですが。
主演とちょい役が交代してるやん!!!
(画像はKMDbより)
チェ・ウシクを助手に、悪魔祓いのアン神父を演じているのが、超ベテラン俳優のアン・ソンギ。七つ道具の入ったバッグを手に、たったひとりで世界中を回りながら悪魔と対決しているバチカンの神父です。
アン神父のキャラクターは、おそらく「スパイダーマン」シリーズのニック・フューリーをイメージしているのだと思います。
重厚で、強面で、やり手なのに、素顔はめちゃくちゃチャーミング。悪魔が駆け回る映画かとヒヤヒヤしながら観に行きましたが、アン神父のおかげで何度も笑わせてもらいました。
そう、これができるのがアン・ソンギなんですよね。しかも今回は共演の俳優が若いので、彼の発声のすばらしさが際立っていました。
腹の底から声を出すので、ささやき声でもはっきりと聞き取れます。ハンフリー・ボガートがこんな話し方でした。昔の俳優は舞台が活動の中心の場だったので、発声をまず鍛えたそうです。発声ができてこそ、温もりを感じさせたり、怖れを感じさせたり、自在にコントロールできるから。こういう細かい技が伝わっていくといいなー。
悪魔に魂を捧げた男を演じるのは、ウ・ドファン。クールビューティーなイメージが怖さを引き立てています。
(画像はKMDbより)
「エクソシスト」とはカトリックの用語で、悪魔にとりつかれた人から、悪魔を追い出して正常な状態に戻すことを指すそうです。ウィリアム・フリードキン監督の映画が有名ですが、トラウマになりそうなくらいコワイと聞いたので未見です。
悪魔の奇怪な動きとアクション対決によって、若手の演技を引き出したのは、キム・ジュファン監督。前作「ミッドナイト・ランナー」でも主演にパク・ソジュンをすえています。
とかく韓国映画はモーレツな暴力を描くことで残忍さを強調することが多いのですが、この映画では編集と音楽で盛り上げるのみ。
苛烈な暴力がなくても、人間の残酷さを描くことはできる。
そんな挑戦になっているのではないかな。もちろん、パク・ソジュンと悪魔の闘いはスタイリッシュでパワフル。続編への意欲がにじんだラストに、これからが楽しみになりました。
映画情報「ディヴァイン・フューリー/使者」129分(2019年)
監督:キム・ジュファン
脚本:キム・ジュファン
出演:パク・ソジュン、アン・ソンギ、ウ・ドファン、チェ・ウシク
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