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ツンデレ王子を支える“お互いさま”精神のぬくもり ドラマ「100日の郎君様」 #556


久しぶりに出会った「ベタ of ベタ」なドラマが、なぜかとても心に残るものでした。

韓国ドラマによくあるパターンといえば、ドロドロの愛憎劇、復讐劇、そして割とカンタンに人が死んでしまう交通事故や不治の病。極めつけはやっぱり記憶喪失です。

こうした、現実にはそうそうないような非現実的な出来事が頻発し、ストーリーがジェットコースター並みに急展開していくドラマのことを「マクチャンドラマ」といいます。

「マクチャンドラマ」は「ありえねー!」といいながら、ついついハマってしまう要素をつめこんだドラマなのですが。最近ではさすがにそこまでの展開は避けられるようになったようで、「マクチャンドラマの見過ぎだよ!」なんてセリフも飛び出すほどになりました。

そんな中で観た「100日の郎君様」は、王位を巡る陰謀というベタ中のベタな設定なのに、カラッとしているんです。この違いは……。

私心の違い、かもしれない。

分かりやすい悪玉には、分かりやすい野望があります。でも、記憶を失い、“バカ”扱いされている男を支える人々には、私心がない。「お互いさま」の心がとても気持ちいいドラマでした。

☆☆☆☆☆

ドラマ「100日の郎君様」

DVD


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<あらすじ>
王族の少年・ユルは、名家のおてんば娘・イソと出会って心惹かれ、大きくなったら結婚したいと告白する。だが、クーデターでイソの父が殺されるのを目撃してしまう。世子となったユルは、雨乞いの儀式に出かけた際に襲撃を受け、負傷。目覚めた時には記憶を失っていた。ユルを見つけた村の男ヨン氏は、娘と結婚させることにするが……。


時代劇なので難しい用語も出てくるんですよね。ちょっとだけ説明しておくと。

郎君(ナングン):夫。または、身分の高い男子のこと
殿下(チョナ~):王族に使う敬称
主上殿下(チュサンチョナ):王
世子(セジャ):皇太子。次の王のこと

これだけ知っておけば、まあまあついていけます。

ドラマで世子を演じているのは、EXOのD.O.ことド・ギョンス。K-POPアイドルの中でも演技力の高さで定評のあるギョンスが、時代劇に初主演しています。

ただ、ドラマの途中までニコリともしません……。

幼い頃に父のクーデターによって“世子”となってしまったため、心に傷を抱えているのです。母は追放され、初恋の人の生死も分からない。憎き相手の娘を妻に迎えることになるも、夫婦としての関係は一切拒絶。おまけに襲撃から逃げる途中で記憶を失ってしまい、“平民”として生きることに。

笑顔が見られるのは7話です。ギョンスが好きな方は、そこまでがんばってください。初めてギョンスに会うという方は、ツンデレ感をお楽しみください。

“平民”のくせに、手を後ろに組んで堂々と胸を張り、役人にも物怖じせずに正論を吐く。この立ち姿のことを、わたしはユチョン式“王世子スタイル”と呼んでいます。ユチョンが主演したドラマ「屋根部屋のプリンス」以降、世子役の俳優は、やたらとこの姿なんです。

記憶喪失のはずが、ボロ家を見て「不快だ」、木綿の服を見て「不快だ」、かけごはんを見て「不快だ」と、とにかくワガママ放題。力仕事はもちろん「不快だ」です。

そんな彼のことを見捨てず、「なにかできることもあるでしょ」とかわいがる村の人々に、ホッとします。


記憶がないまま、100日間「夫婦」として過ごした、その相手はいったい……という展開が、韓国ドラマらしい。

いまの状況で、「ベタ of ベタ」の中に描かれる「お互いさま」に触れると、ちょっとホロリとしますよ。

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ド・ギョンスは現在兵役中ですが、1月25日に除隊する予定です。さっそく次回作も決定しています。今後の韓国映画界を盛り上げてくれる存在だと思います。大きなスクリーンで会いたい俳優です。


ドラマ「100日の郎君様」tvN 全16話(2018年)

監督:イ・ジョンジェ

脚本:ノ・ジソル

出演:ド・ギョンス(EXO D.O.)、ナム・ジヒョン、キム・ソノ、キム・ジェヨン

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