王様のパンツって、そうなっていたのかー!!!
威厳と賢明さと権威の象徴である、朝鮮王朝の王様。その装束は「龍袍(ヨンポ)」と呼ばれています。第4代国王の世宗以降は、五爪の龍が刺繍されるようになりました。
(画像はKMDbより)
映画やドラマでは豪華な衣装や、狩猟用の衣装などを見ることができますが、この、下が、どうなっているのか。
気になりませんか?
博物館などに展示されているのは、もちろん華やかな上掛けだけ。着物を着るときの「長襦袢」的な「下着」は見たことがあるものの、これはいわゆる「パンツ」とは違います。
そんな下世話な興味を満たしてくれる映画が「尚衣院 サンイウォン」です。いえ、ホントはデザイナーの世代交代を巡る悲劇を描いた映画です。この映画に、出てくるんです、王の「パンツ」が! 長年の疑問が解けたので、思わず強調したくなってしまいました。
映画の主役は、“衣装”。ハン・ソッキュとコ・スの新旧デザイナー対決は、サリエリとモーツァルトの確執を彷彿させるものです。
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映画「尚衣院 サンイウォン」
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王室の衣服を作る部署、尚衣院を取り仕切るドルソクはその功績が認められ、半年後には両班(貴族)となることが約束されていた。ある日、王の衣服を誤って燃やしてしまった王妃は、巷で天才仕立師として話題を集めていたゴンジンの存在を知り、王宮入りを命じる。王妃の美しさに心奪われたゴンジンは才能を発揮させ、たちまち王宮で活躍するように。しかし、規則と伝統を重んじるドルソクは、ゴンジンが生み出す革命的デザインに危機感を抱くようになり……。
王に信頼され、あと少しで貴族の称号をもらえるという男・ドルソクを演じるのは、名優ハン・ソッキュ。斬新なデザインで人々を虜にしてしまう男・ゴンジンを演じるのは、愛嬌たっぷりなイケメン俳優コ・ス。
(画像はKMDbより)
アメリカで映画を学んだイ・ウォンソク監督にとっては、これが3本目の映画です。パク・シネやユ・ヨンソクら若手俳優を起用。ひょうきんでお調子者な役人としてマブリーことマ・ドンソクも出演しています。
荘厳な王宮絵巻と地道なもの作りの現場をギュギュッととりまとめました。
劇中、特に示されているものはありませんが、「母の身分が低かった」「兄から王位を引き継いだ」というセリフがあることから、ユ・ヨンソク演じる王は“英祖”をイメージしているのだと思われます。
重臣たちから蔑まれ、地位を脅かされている王にとって、王妃との悲劇には思わずウルッときてしまうのですが。
やっぱり新しい衣装のデザインに悩むふたりの匠の対決がおもしろい。創造の広がりをファンタジックに演出したシーンも夢がありました。
思わぬ形でデザイン対決をすることになってしまったドルソクとゴンジンのふたりは、頭を悩ませます。ひとりは、着る人を笑顔にすることを考えて頭を悩ませる。もうひとりは、負けないことに必死になる。
この憤りは、嫉妬のせいなのか、軽蔑のせいなのか。
この劣等感は、身分のせいなのか、無邪気への憧れのせいなのか。
この哀しみは、敗北感のせいなのか、焦燥感のせいなのか。
自分とは違う、新しい才能に出会い、その才能を愛しつつ、湧き上がる想い。デザイナー同士だからこそ通じ合う、喜びとリスペクトの気持ちもありつつ、自分の手から“成功”がこぼれ落ちそうなとき。冷静でいられるアーティストはいないでしょう……。
華やかな衣装に隠された秘密に、芸術家の業を感じました。
映画情報「尚衣院 サンイウォン」127分(2014年)
監督:イ・ウォンソク
脚本:イ・ビョンハク
出演:ハン・ソッキュ、コ・ス、パク・シネ、ユ・ヨンソク、マ・ドンソク
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