韓国時代劇の巨匠と呼ばれ、アジア全土に韓国時代劇ブームを巻き起こした人物といえば、イ・ビョンフン監督です。多くの場合、身分が低く、歴史の中で疎外されてきた人物、特に女性を主人公に据えたドラマを作っています。
著書の『韓流時代劇の魅力』には、こんな言葉も。
映画スターだったイ・ヨンエを主演に迎えた「宮廷女官チャングムの誓い」、ハン・ジミンの美しい泣き顔に打たれた「イ・サン」などのドラマを手掛けた監督が、次に目を向けたのが、“英祖”の母である“崔淑嬪”でした。
“崔淑嬪”は賤民出身で、下女として宮廷の下働きをしていました。第19代国王・粛宗(スクチョン)に見初められ子をなすも、宮廷には居場所がありません。しかも王妃の座を巡る争いも絶えず、後継者だった景宗(キョンジョン)が早世してしまう。
そして棚ボタのようにやってきた、わが子が王位に就くという行幸。王宮の外での、母との平凡な暮らしが、“英祖”を聖君にしたともいえます。
ドラマ「トンイ」は、そんな“崔淑嬪”の生涯を追ったドラマです。
「チャン・オクチョン」→「トンイ」→「イ・サン」へと続く、壮大な歴史物語が、このドラマによってつながりました。
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ドラマ「トンイ」
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1680年3月初旬の深夜、司憲府大司憲チャン・イクホンが何者かに殺害される。事件の容疑者にされたチェ・ヒョウォンと息子のチェ・ドンジュは、真犯人を探る中で罠にはまって捕縛。部下共々皆殺しにされてしまう。追っ手を逃れたヒョウォンの娘・トンイは、身を隠すために宮殿の掌楽院に入り、下働きをすることに。幼いころ、罠をしかけた人たちの手信号を覚えていたトンイは、その女性が禧嬪(オクチョン)であることに気づき……。
最近の韓国ドラマはシーズン制が多くなり、ほぼ16話の構成になっています。ただし、1話が映画並みの長さなのですが。笑
イ・ビョンフン監督が作った時代劇シリーズは話数が長く、「トンイ」は全60話あります。
これだけの長さを引っ張っていくのですから、メリハリが必要になりますよね。そこで冒頭に殺人事件を入れてミステリー要素を加えたり、掌楽院という王宮の音楽を担当する部署を入れたり、と工夫したそうなのですが。
受けなかった……。
掌楽院の先輩役イ・ヒドとイ・グァンスコンビの掛け合いなんかはおもしろかったですけどねー。音楽といっても民族楽器ですし、しかも画が地味。しかたなく、第5話からはストーリーをガラッと変えたそうです。
イ・ビョンフン監督自身は先ほどの著書の中で、時代劇の発声に苦労したものの、22歳の若さで主演を務めたハン・ヒョジュを「よくがんばった」とねぎらっています。
思わず笑ってしまった。親族というバックがあったからこそ王妃になれたオクチョンと、自らの手で運命を切り開いたトンイ。この差は大きくて、これまでは
トンイ:善 vs. チャン・オクチョン:悪
という構図で描かれてきたそう。圧倒的な存在感をほこるキャラクターを前に、正義を盾に突っ走るタイプの「トンイ」には、若さのエネルギーを借りるしかなかったのではないかと感じます。
王族と庶民のギャップも感じられるドラマです。現在、Amazonプライムで配信されています。
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