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韓国初のSF大作はやっぱりあの味 映画「スペース・スウィーパーズ」 #583


韓国初の宇宙SF映画として注目されていた「スペース・スウィーパーズ」ですが、2度の公開延期の結果、2021年2月5日にNetflixで配信されることになりました。全世界に同時公開され、人気映画ワールド1位を記録しています。

感想をひと言でいうと、成城石井と紀伊国屋で高級食材を買ってきて「高級レストランのハンバーグを作るぞー」と思ってたのに、いつもの「お家のハンバーグ」だったような感じでした。どんなや。

☆☆☆☆☆

映画「スペース・スウィーパーズ」
https://www.netflix.com/title/81094067

☆☆☆☆☆

<あらすじ>
2092年、砂漠化や土壌の酸素化が進んだ地球は、人間がほとんど住めなくなっていた。宇宙開発企業UTSは宇宙空間に新しい居住地を建設するが、優秀な遺伝子を持つ一部の人間だけを選別することに。宇宙ゴミを集める賞金稼ぎの「勝利号」メンバーは、ある日、行方不明の子ども型ロボット爆弾「ドロシー」を発見。金目当てに取り引きをしようとするが……。


宇宙空間、賞金稼ぎ、宇宙船での戦闘ときたらもう、「スター・ウォーズ」ですよね。

(画像は映画.comより)


その「スター・ウォーズ」でルークを演じたマーク・ハミルは、自身の役どころについて「オズの魔法使いのドロシーだと思った」と語っています。


で、この韓国初の宇宙SF映画「スペース・スウィーパーズ」はですね。

「スター・ウォーズ」×「オズの魔法使い」×韓国映画

という、最強の組み合わせでできているといえます。

まず、子ども型ロボット爆弾の名前が「ドロシー」ですもん。めちゃくちゃ愛くるしいんですが、水素爆弾規模のパワーを持つとされています。

(画像はKMDbより)


賞金稼ぎのメンバーも、心臓を手に入れたいブリキの木こりや、勇気が欲しいライオンたちになぞらえることができます。そして、やっかいなものを見つけてしまって、頼まれるままに“届ける”ことになってしまう展開は、「スター・ウォーズ」のエピソード4そのもの(最初に公開されたやつね)。

おまけに「神と共に」シリーズ「新 感染半島 ファイナル・ステージ」などで高い技術力をみせたデクスター・スタジオがVFXを担当。今回もハイクオリティな映像で、ハリウッド映画にも負けてない。

なのに。

ここまで高品質な材料がそろっていて。

「お家のハンバーグ」に仕上げてしまうところが、ある意味すごい!!!

これはやっぱり、脚本ですね。「勝利号」なんて絶妙にダサい船名を付けちゃって、それをタイトルにするくらいだから……。そして、韓国映画お決まりの「泣かせクセ」のせいだと思われます。いや、もうここまで来たら「クセ」ですよ。

そしてもうひとつ。

主演のふたりが若かったのではないかなと思うのです。「勝利号」の機関士タイガー・パクを演じるチン・ソンギュや、ロボットのバブズのモーションキャプチャと声を担当したユ・ヘジンは、さすがの巧さなんです。

(画像はKMDbより)


だけど、「勝利号」の操縦士テホを演じたソン・ジュンギや、船長役のキム・テリは、ぶっちゃけ、迫力不足。

このままでは「悪い魔女」に飲み込まれてしまうよー!!!

そんなシーンでの説得力がもう少しあればなーと思ってしまったのでした。モヤるところはありつつ、このレベルの映画を、劇場で観られなかったのは本当に残念です。

だって、「スター・ウォーズ」シリーズという、スペースオペラの一大モデルのレベルに慣れているわけです、世界の観客は。そこにピンポイントで寄せていくなんて、すごいチャレンジですよね。

ハン・ソロがおんぼろのファルコン号を愛したように、ボロボロで借金のカタに差し押さえられてしまう「勝利号」も、メンバーたちの愛する船です。肝心なところでエンジンがヤバくなったりするとこは、そうこなくちゃね!とガッツポーズが出てしまう。

2092年。人間は選別され、格差が最大限に広がった世界。宇宙ゴミの清掃で金を稼ぎ、食うや食わずで生きる人びとが出会った「ドロシー」。

爆弾の破壊力にビビるけれど、愛らしい笑顔は抱きしめたくなります。竜巻に乗って飛んでいってしまう前に、観ておいてください。


映画情報「スペース・スウィーパーズ」137分(2021年)

監督:チョ・ソンヒ

脚本:チョ・ソンヒ ユン・スンミン ユガン・ソエ

出演:ソン・ジュンギ、キム・テリ、チン・ソンギュ、ユ・ヘジン

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