スキップしてメイン コンテンツに移動

『100案思考』#670


発想術の本は世の中にたくさんありますが、アイデアはいったいどうやって選ばれ、世の中に出るのか。これが、長年の疑問でした。

コピーライターは新人のころ、「100本ノック」をすると聞いたことがあります。でも、本当に100案出せたとして、いい・悪い、使える・使えないを決める基準はあるのか。その「選び方」を知りたい。

その疑問に答えてくれたのが、橋口幸生さんの『100案思考 「書けない」「思いつかない」「通らない」がなくなる』でした。

☆☆☆☆☆

『100案思考』
https://amzn.to/3fd9Tab

☆☆☆☆☆

著者の橋口さんはコピーライターを生業にされている方で、これまでにも文章術の本を出版されています。

『言葉ダイエット』


『言葉ダイエット』刊行記念トークイベント
https://note.com/33_33/n/n2838e0bdedbc

今回の本は「アイデア」に関わる内容ということで、出版前からとても期待していました。そして読んでみて。


期待以上の満足度!!!


お値段以上ニッコリ!!!


アイデア」を巡る誤解や、「思考の壁」の突破法、そして「最高の1案」の選び方が紹介されています。

おもしろいのは「実践編」です。「デリバリー用の新メニューのアイデアを開発する」というお題から、実際に100個の案を創出。絞り込みを行うまでの、「プロの技」が開陳されているのです。


わたしは校閲ガールの仕事をしつつ、会社の研修の企画立案を担当しています。今年の1月に実施した勉強会のテーマがまさに、「アイデアの捨て方」でした。このときに説明してもらった(講師は社内のプランナー)基準はこちらでした。

<アイデア選びの3要素>
アテンション → 興味をひけるか
パーセプション → 納得度・共感度が高いか
アクション → 行動まで結びつくか


でも、まだまだ抽象的な基準だったんですよね。参加者からは「なるほど!」という感想をもらったものの、もうひと工夫したいなと思っていたのでした。そこに、ドンピシャで当たったのが『100案思考』。

中でもとても共感したのが、「好き嫌い」で選ばないという話です。
“人気クリエイターのアイデアはよくて、新人のアイデアはつまらない。そんなワケないですよね。しかし、人格とアイデアの区別ができない人は、しばしばこういう判断をします。”

人格とアイデアの区別ができない。ちょうどこれに困っておりました……。

「自分的最高の1案」にこだわるあまり、フィードバックにまったく耳を貸さない人や、フィードバックを攻撃と受け止めて逆上する人もいます。アイデア出しの場だけではありません。

校正という仕事柄、人の書いた原稿に赤字を入れるときは、とても緊張します。細心の注意を払って根拠を集め、おずおずと指摘したところ「挑発は止めてください!!!」と叫ぶ人もいるんですよ。世の中には……。(以上は愚痴)

『100案思考』で橋口さんが指摘されているように、自分と仕事を切り分けた方が、自由に、楽しく、発想を広げられるのだと思います。

そして、100案は「最高」の100案でなくてもよいという点にも注意が必要です。

最初から「最高」の1案を出そうとしてしまうのは、「渾身の○○」という言葉が流行りすぎてしまったからではないか。そんな気がしてしまった。アイデア出しの段階でハードルを上げてしまうと、苦しむのは自分ですよね……。

100個もあれば、捨てることにも(ちょっと)迷いがなくなるように思います。コピーライターの大御所・谷山雅計さんは、「何十年もやってたら、100本の手前で方向性が分かるようになった」と仰っていましたが、トーシローのわたしなんかは、とりあえずの目安としてやっぱり「100」を目指して「考える」を突き詰めたいな。

もしかしたら、自分の仕事はクリエイティブな業務じゃないし、とか、広告には関係ない業界だし、という方もいるかもしれません。

でもね。

「アイデア出しに三振はない」「仕事は楽しく。遊びは厳しく」などなど、日々の仕事の励ましになる言葉もいっぱいなのです。

予算度外視で、大きく風呂敷を広げられたときの万能感と、現実化へのステップを同時に見せてくれる一冊です。

そして、今日5月13日の夜19時から、代官山 蔦屋書店主催の出版記念イベントがオンラインで開催されるそうです。トークのお相手は、『読みたいことを、書けばいい』の著者・田中泰延さん。『100案思考』の中にも登場されていますよ。

イベントの詳細はこちらです。

<代官山 蔦屋書店 イベントサイト>
https://store.tsite.jp/daikanyama/event/humanities/19672-1915230416.html



コメント

このブログの人気の投稿

映画「新しき世界」#293

「アメリカに“ハリウッド”があるように、韓国には“忠武路”という町があります」 第92回アカデミー賞で 「パラサイト 半地下の家族」 が脚本賞を受賞した時、ポン・ジュノ監督と共同で脚本にあたったハン・ジュヌォンは、そう挨拶していました。「この栄光を“忠武路”(チュンムノ)の仲間たちと分かち合いたい」。泣けるなー! ハン・ジュヌォンのスピーチ(1:50くらいから) アメリカにハリウッドがあるように、韓国には忠武路というところがあります。わたしはこの栄光を忠武路の仲間たちと分かち合いたいと思います。ありがとう! #アカデミー賞 https://t.co/LLK7rUPTDI — mame3@韓国映画ファン (@yymame33) February 10, 2020 1955年に「大韓劇場」という大規模映画館ができたことをきっかけに、映画会社が多く集まり、“忠武路”(チュンムノ)は映画の町と呼ばれるようになりました。 一夜にしてスターに躍り出る人や、その浮き沈みも見つめてきた町です。 リュ・スンワン監督×ファン・ジョンミンの映画「生き残るための3つの取引」での脚本が評価されたパク・フンジョン。韓国最大の映画の祭典で、最も権威のある映画賞である「青龍映画賞」で、彼自身は脚本賞を受賞。映画も作品賞を受賞し、一躍“忠武路”の注目を浴びることに。 そうして、自らメガホンを取った作品が「新しき世界」です。 ☆☆☆☆☆ 映画「新しき世界」 Amazonプライム配信 (画像リンクです) ☆☆☆☆☆ <あらすじ> 韓国最大の犯罪組織のトップが事故死し、跡目争いに突入。組織のナンバー2であるチョン・チョンは、部下のジャソンに全幅の信頼を寄せていますが、彼は組織に潜入した警察官でした。この機会にスパイ生活を止めたいと願い出ますが、上司のカン課長の返事はNO。組織壊滅を狙った「新世界」作戦を命じられ……。 あらすじを読んでお分かりのように、思いっきり「ゴッドファーザー」と「インファナル・アフェア」のミックスジュース特盛り「仁義なき戦い」スパイス風味入りです。 無節操といえばそうですけれど、名作のオマージュはヘタをすると二番煎じの域を出なくなっちゃうと思うんです。よいところが薄まっちゃうというか。人気作の続編が、「あれれ?」となるのもそうですよね。ですが。 名作と名作を合わせたら、一大名作が...

キャラクター名“画数グランプリ” 優勝したのは!?「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」 #515

劇場版「鬼滅の刃」が話題ですね。 校閲ガールであるわたしにとって、気になるのはストーリーでも、煉󠄁獄さんのかっこよさでも、興行収入でもありません。 漢字が多すぎ!!! ってことです。 たぶん、すべての校閲ガールや校閲ボーイは、トラウマとなる漢字を持っています。変換ミスや同音異義語を見落とした経験を持っているから……。一度やってしまうと、その漢字を見ただけで「ヒッ!」となります。特に画数の多い漢字はつらいんです。 なのに、 「鬼滅の刃」の登場人物は、全員画数多過ぎでしょ!!! 劇場版「鬼滅の刃」 無限列車編公式サイト 「その刃で、悪夢を断ち斬れ」劇場版「鬼滅の刃」 無限列車編 絶賛公開中!   主人公は竈門炭治郎。その妹は禰豆子。鬼殺隊仲間は、我妻善逸、嘴平伊之助。「鬼殺隊」という名前からすでに怖そうですよね……。ちなみに一度で変換できなくて、「おに」「ころし」「たいちょう」と入力したので、あの日本酒を思い出しました。 清洲城信長 鬼ころしパックが【全国燗酒コンテスト2020】お値打ち熱燗部門 金賞受賞(2年連続受賞)   そんな「鬼殺隊」最強の剣士・煉󠄁獄杏寿郎さんはやはり、漢字の難しさも最高レベル。さすがは炎の呼吸を使う炎柱です。たぶん「隊長」みたいな役職の人です。 今回の映画の敵は魘夢と猗窩座というヤツで、これまで炭治郎たちが戦ってきた鬼よりはるかに強いヤツらしい。文字だけ見ても強そうですもんね。その鬼を束ねている悪の総帥が鬼舞辻無惨。 読み方分かりませんね……? 手書きできませんね……? 「鬼滅の刃」漢字検定1級をとれたらすごいと思います。このアニメとのコラボグッズは、校正するの、大変そう……。 そこで、緊急企画 「画数グランプリ」を開催 したいと思います! 「漢字辞典online」というサイトにて、各キャラクターの名前の画数を確認してみました。 kanji.jitenon.jp 「竈」という漢字を検索すると、こんな感じで表示されます。 この「画数」を足し上げていくのです。さて、優勝したのは!? (表記は公式サイトを基にしています) * * * 第3位:鬼舞辻無惨 54画 第2位:竈門炭治郎 55画 僅差です! 「魘夢」なんて、「魘」だけで24画もありました。これはぶっちぎるのでは……と思いきや、2文字という名前が仇に。けっこうしぶとい強...

日本語を使いこなすために 『助詞・助動詞の辞典』 #478

「校正・校閲」は、「間違い探し」と思っている方が多いようで、とても残念に感じています。「間違い探し」ゲームのようなものなら、どれだけ気楽なことか! わたしが校正を教わった師匠は、「情報を正しくすること」と説明していました。資料をあたったり、日付と曜日を確認したりといった「情報」を確認し、「正しく」整えること。 その中にはもちろん、日本語の文法に合っているかどうかも含まれます。ただ、根拠のない指摘はできないんです。「なんとなく、感覚的に」とか、「わたしならこうは書かない」と思うことがあっても、根拠がなければ単なる揚げ足取りに思われてしまうから。 今の会社でわたしが校正を担当しているのは、主に企業のリリースとweb記事です。以前はインターンの学生に書いてもらった記事も読んでいたのですが、その時いちばん感じたことは。 「日本語の文法を知らない人が多すぎる!!!」 でした。 主語と述語が合わない、いわゆる「ねじれ文」を見たとき。「名詞がね~」や「受け身はね……」なんて説明をしても、「受け身ってなんですか?」から話が始まるのです。道は遠い……。というわけで、自分の勉強のために買った日本語の辞書が『助詞・助動詞の辞典』と『動詞・形容詞・副詞の事典』です。 ☆☆☆☆☆ 『助詞・助動詞の辞典』 https://amzn.to/2U7PWL1 『動詞・形容詞・副詞の事典』 https://amzn.to/3q8Nn7z ☆☆☆☆☆ (なんかビックリする値段になってるからご注意を……。定価は2800円です) この本、どちらも早稲田大学日本語研究教育センター所長の森田良行さんがまとめたものなのですが、「辞典」と「事典」なことにお気づきでしょうか。 『助詞・助動詞の辞典』の方は、「は」と「が」の違いといった解説を載せたもの。 一方の『動詞・形容詞・副詞の事典』はというと、各品詞ごとに文型や用法、類義語を集めた事例の本だからです。 特に重宝しているのは、『助詞・助動詞の辞典』にある「ので」と「から」の違いや、「に」と「へ」の違いです。ざっくり説明すると、こうなります。 「に」:場所→ 駅に行く(駅自体に用事がある) 「へ」:方向→ 駅へ行く(駅の方向に向かう) 一文字違うだけで、ニュアンスがちょっと違うんですよね。はぁ、日本語って奥深い。 日本語学者の方なら、古典の○○の頃には「を」で受けて...