「人間の悩みは、すべて対人関係の悩みである」
オーストリア出身の精神科医であり心理学者のアルフレッド・アドラーの言葉です。「会社」という組織の中で、上司と部下の関係、他部署の人との関係、同僚(=ライバル)との関係などなど、「対人関係の悩み」は、誰もが一度は味わったことがあるのではないでしょうか。
日本のITトップ企業であるヤフーでも、現状は同じ。そこで取り入れたのが、上司と部下との「1on1」ミーティング。本間浩輔さんの『ヤフーの1on1―――部下を成長させるコミュニケーションの技法』には、トークの例も紹介されています。
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『ヤフーの1on1―――部下を成長させるコミュニケーションの技法』
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著者の本間さんは、ヤフー株式会社のコーポレート総括本部長をされている方です。人事革命を実行し、戦略人事プロフェッショナルとしても知られています。
そんな本間さんが取り入れたことで話題になった「1on1」ミーティングは、ひところ組織の「改善薬」としてもてはやされたような記憶があります。
毎週1回、原則30分を部下とのコミュニケーションに充てる。
ただそれだけで、なぜ変われたのか。ヤフーの人材育成の基本方針は、「社員の才能と情熱を解き放つ」こと。「1on1」を実施する目的のひとつがこれで、もうひとつは経験学習の促進にあるのだそう。だから、ただ部下の話を聞くという時間は、「ちゃんとあなたのことを気にかけていますよ」というメッセージとして伝わり、部下の側に安心を与えるからかもしれません。
わたしが勤務している会社でも「1on1」を実施している部署がありますが、どうも上司がしゃべりすぎているみたいで。あと、トラブル対応などで感情的なしこりが残っている場合には、部下の方が上司に対して信頼をなくしているので、「対話」が成立しなかったこともあるらしい。
こうした、「上司がしゃべりすぎる」「解決案を出してしまう」といったことはよくあるようで、本にはトークスクリプトとして掲載されています。客観的にトークを見直し、受け答えへのフィードバックを見ることができるのです。
基本的に「1on1」は、「部下のための時間」です。テーマは部下が決め、上司は話を「聴く」係であることを意識する必要があるわけですが。
分かってはいても、自分がどんな言動をしているのか、客観的に振り返るのは難しいですよね。そこでヤフーは「シャドーコーチング」というトレーニングも取り入れているそうです。
上司役と部下役を決め、それぞれの後ろにシャドーが付き、聞き方・話し方を観察する。役割を交代しながらフィードバックをするというもので、これは確かに効果的だろうなと思います。
現在ならZoomなどのオンラインでミーティングをする人も多いでしょうし、その場合はレコーディングして自分で見直してみるのも手かもしれない。
昨日ご紹介した『クリエイティブ人事 個人を伸ばす、チームを活かす』にもありましたが、「聴く」ってホントに難しいスキルなのだと思います。
頭の回転が速い人ほど、解決策をさっさと提示して決めたがるし、人が話している途中で割り込んでしまう傾向がある気がしています。「待て!!」と言いたくなってしまうのだけど、これに自分で気付ける方法がないものか。レコーディングを見直してもらうしかないのかな。
「1on1」ミーティングは、コーチングとティーチングの掛け算といえそうですが、育成にはなによりも「待つ」勇気が必要なのかもしれません。
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