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『超クリエイティブ 「発想」×「実装」で現実を動かす』#671



熱いマインドの人が書いた本は、熱い。

その熱量はどこからくるのかというと、自分の意思を「誰かに伝えたい」ところからだと三浦崇宏さんは著書『超クリエイティブ 「発想」×「実装」で現実を動かす』で語っています。

そしてその「誰かに伝えたい」という強い欲望こそが、クリエイティブの源泉なのだ、と。

『超クリエイティブ』は、数々の伝説的な広告を生み出してきたクリエイティブディレクターによる、仕事術の本です。

『超クリエイティブ 「発想」×「実装」で現実を動かす』
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三浦さんの本を読んでいると、「たとえる技術」が抜きん出ているのだなと感じます。たとえば、こういうお話です。

“GAFAが世界にもたらしたのは「生活の民主化」。これをもっと具体的なイメージで語るのであれば、日本の回転ずしチェーンでいうところの「生活のスシロー化」だったと言えます。”

テクノロジーの進化によって、企業が自らの機能を先鋭化し、新たなビジネスモデルを生んだという説明が、こんなにシンプルになってしまう。小難しい言葉を並べるより、「生活のスシロー化」だよね!と、ひと言で説明された方が、スッと納得できます。

こうした言葉の選び方は、前著の『言語化力 言葉にできれば人生は変わる』に詳しいです。

『言語化力 言葉にできれば人生は変わる』
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『超クリエイティブ』で語られているのは、一貫して「コアアイデアに注目せよ」です。企画を考えるとき、アイデアを出したいとき、まずやらなければならないのは、「コアアイデア」をつかむこと。

上のスシローの例も、GAFAとスシローのコアを掴んでいるからこそ、生み出せるたとえなのだと思います。

昨日ご紹介した橋口幸生さんの『100案思考』の巻末に、橋口さんと三浦さんの対談が収録されています。


わたしが「アイデアの捨て方」を研修で取り上げたいと考えていたとき、この本に出会えていればなーと思った一冊です。

「人格とアイデアの区別ができない人」への対応として、三浦さんの本では「つくる」と「選ぶ」に分けることが重要と説明されていました。なぜなら、アイデアを出した人にはどうしてもプランに対する愛着が生まれてしまうから。これはたぶん、配慮なのでしょうね。

三浦さんや橋口さんのような、何十年もアイデアを生んできたプロの方でも難しいことなのですよね……。

対談の話に戻ると、橋口さんは発想法として「商品」「競合」「消費者」「世の中」の4つの切り口を教わったのだそう。これに対して、三浦さんは「社会」「未来」「人生」3つのベクトルを挙げておられます。

社会:社会に対してどんな意味があるか

未来:未来で広がったらどうなるか

人生:自分にとって、あるいは熱狂しているユーザーの人生にとってどんな意味があるか

この「未来」という視点にこそ、三浦さんの独自性が表れているとのこと。まさに、その「未来」視点に、熱さを感じたのです。


誰もが発信者となれるいまの時代は、誰もが変化の起点になることができるということでもあります。自分の意思を「誰かに伝えたい」ところから始まるクリエイティブ。自分にもできるような気がしてくるから不思議。熱い人の熱さは伝染するんですね、きっと。



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