初めて会った作品なのに「惚れたぜー!!」と思わせてくれたのが、『スモールワールズ』の一穂ミチさんでした。「BLの巨星」と呼ばれているそうです。
「歪んだ家族を描いた短編連作を」という編集者の依頼を受けて書き上げられた6編の短編。家族という「小さな世界」の中で起きた事件に、胸がギュッとなりました。
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『スモールワールズ』
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子どものころはマンガ家になりたかったという一穂さん。なんと「魔王の帰還」がコミカライズされることになり、大喜びしたのだそう。
「アフタヌーン」誌に連載されているマンガの第1話は、こちらから読むことができます。
「魔王の帰還」第1話
https://afternoon.kodansha.co.jp/c/maounokikan.html
「魔王の帰還」は、身体が大きくて、まっすぐな性格の姉が、とつぜん婚家から出戻ってくる、というお話。野球部で問題を起こし、学校になじめずにいた弟と、同級生で駄菓子屋の菜々子と3人で金魚すくいの大会に出ることになってしまいます。クスリとさせられるシーンもありつつ、姉が家を出てきた理由にウッとなってしまう。
そう、どのお話も、平穏な日常に潜んでいる「ウッ」となる転換がお見事なんです。
東山彰良さんの『小さな場所』は、9歳の目に映る「小さな場所」を描いていました。そこには人間の生き様すべてが詰まっていたのですけれど。
『スモールワールズ』もやはり、家族という「小さな世界」を描いています。でも、家族って時にはとても閉鎖的な関係になってしまうのですよね。家族だから甘えてしまう、家族だから秘密にしておきたい、家族だから差し違えてしまう。
背中がヒヤリとするような展開や、ホロッと温かくなるようなラストなど、後味もさまざまで、これは短編集ならではだなと思います。
次回作も、今後の活躍も期待大。現在、本の出版を記念したスペシャル朗読企画「回転晩餐会」が公開されています。19分と短いので、ぜひ聞いてみてください。「ウッ」となる転換に、ポロリときます。
「回転晩餐会」
担当編集者さんが一穂さんにインタビューした記事も。編集者さんの前のめりな様子に笑ってしまいました。
『スモールワールズ』ができるまで!〈一穂ミチ大解剖インタビュー〉
https://tree-novel.com/works/episode/ff039f1394219145dbdcf14a875d32a4.html
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