韓国版「仁義なき戦い」は、激しく仁義がなかった!
日本未公開映画だったファン・ジョンミンとリュ・スンボム主演の映画「潜入」が公開されました。韓国では2006年に上映されていて、172万人の観客を動員。この年の興行収入でも13位につけています。
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映画「潜入」
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1998年、IMF経済危機によって大きな打撃をうけた釜山で、麻薬密売人サンドは記録的な利益を上げていた。一方、麻薬捜査を担当する刑事ジングァンは、4年前に相棒が麻薬王チャン・チョルに殺されたことから「釜山から麻薬を一掃する」と執念を燃やしていた。サンドの弱みを握ったジングァンは、サンドを組織のトップに接触させようとする。しかしサンドもまた、その状況を利用して麻薬密売の頂点に立とうと企み……。
1997年に韓国を飲み込んだアジアの通貨危機。経済が落ち込んだ韓国では、自殺率が急上昇しました。2004年にはOECD加盟国で1位となり、以降も高水準となっているそう。
映画は、そんな破れかぶれでどん底状態だった、1998年の釜山が舞台です。
ある程度の年齢以上の人にとって、釜山と聞けばチョー・ヨンピルの「釜山港へ帰れ」が思い浮かぶはず。映画の挿入歌としても使われています。
歌だけだとあんまりピンとこないかもしれませんが、釜山の方言って、とても難しいのです……。わたしはソウルの大学で韓国語を学んだので、釜山や慶州に行った時はヒアリングさえできずに苦労したんですよね。ある意味、ショックでもありました。まだまだやな……と思って。
クァク・キョンテク監督の「友へ チング」は、まさに釜山が舞台の青春映画です。日本で公開された際、とても苦労したと字幕翻訳を手がけた根本理恵さんが語っておられました。やっぱ、プロでも難しいのかと思ったのですけれど。
そんな、釜山が舞台のチンピラ映画です。
チェ・ホ監督は、深作欣二監督のファンなのです。
東映やくざ映画路線の大爆走!!!
(画像は映画.comより)
やさぐれた刑事を演じるファン・ジョンミンは、まだプリッと若いし、チンピラの麻薬密売人を演じるリュ・スンボムなんて、もっとプリッと若い。
ちょっと間延びしたように聞こえる釜山訛りを駆使して、激戦を繰り広げています。
釜山にも近い馬山出身のファン・ジョンミンが、釜山訛りのセリフを録音し、リュ・スンボムはそれを聴いて練習したそうですが、ホントはファン・ジョンミン自身の訛りもちょっと違う。けど、わざと語尾を長く伸ばしたりしながら演じています。
この映画の後、ふたりはリュ・スンワン監督の「生き残るための3つの取引」でも共演しています。リュ・スンワン監督は、リュ・スンボムのお兄ちゃんです。
15年前の映画が、いま日本で初公開されるのはちょっと不思議でもあります。おかげで、いまの映画は表現が変わったのかも?と感じるシーンもありました。
リュ・スンボム演じるサンドは、自分のせいで兄貴分が殺されたという自責の念もあり、兄貴の彼女でヤク漬けにされた女性をかくまうのですが。
いまなら、このシチュエーションで女性を殴らないかもなーという場面があったのです。韓国映画らしいガチのノワールだけど、少しずつ洗練されてきているのかもしれませんね。とはいえ、ドロドロに生臭い人間同士の争いなのですけど。
この映画には、エンドクレジットが終わった後に「おまけ」映像が流れます。ドブネズミ流でも生きられるヤツは強いなーと思わせる、ちょっとクスッとなる映像です。
この「おまけ」映像のことを、韓国語で「クッキー映像」と呼ぶことを知りました。英語では「Credit Cookie」というそうで、映画史におけるベスト「Credit Cookie」をピックアップしているサイトも。
悪いやつと、もっと悪いやつの生き残り合戦。クッキーでも食べながら、「最後まで楽しんでね」という忠告なのかしら。けっこうお腹いっぱいになります。
映画情報「潜入」117分(2006年)
監督:チェ・ホ
脚本:チェ・ホ
出演:ファン・ジョンミン、リュ・スンボム、チュ・ジャヒョン、キム・ヒラ、オン・ジュワン、イ・ドギョン
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