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『天気が良ければ訪ねて行きます』#728


30度近い気温の週末ですが、真冬の小説はいかがでしょうか?

韓国の小説家イ・ドウさんの『天気が良ければ訪ねて行きます』は、「スノードーム」のような小説で、かなり胸キュンしてしまいました。

ドーム形の透明な容器の中で、キラキラ・ヒラヒラと舞う雪を楽しむ「スノードーム」。ゆったりとした気分になれるし、閉じ込められた世界への安心感もある。

雪深い江原道の町が舞台です。凍てつく寒さのために事故が起きたりしているんだけど、それでも。

とても温かいんです。

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『天気が良ければ訪ねて行きます』
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<あらすじ>
ソウルで美術講師をしていたヘウォンは、生徒とのトラブルが原因で仕事を辞めてしまう。ひと冬を故郷で過ごすため、叔母の営むペンションに帰省。隣の空き家は、小さな本屋になっており、同級生のウンソプが経営していた。ウンソプにとっては初恋の人であるヘウォンが戻ってきたことで、静かな冬の生活が変わっていく……。


「キム秘書はいったい、なぜ?」のパク・ミニョン主演でドラマ化もされています。ただ、CSの衛星劇場でしか放映されなかったみたいなんですよね。今後、配信に出てくることに期待したいです。


イ・ドウさんの小説を読んだのは、これが初めてでした。ラジオの脚本やコピーライターとして活動されてきたそうで、韓国では「ゆっくり大切に読みたい本」として愛されている作家だそうです。

小説の舞台となった町は架空の市ですが、江原道はホントーーに寒い地域です。2018年に開催された「平昌オリンピック」の平昌があるところ。今年の1月には氷点下28.9度を記録したとニュースになっていました。


そんな豪雪地帯の田舎町に、ポツンと立っている本屋さん「グッドナイト書店」。なかなか経営は厳しそうだけど、読書用の本をキープしておけるようにしたり、文章の勉強会を開いたりと、地域の人たちに愛される書店として運営されています。

出版業界が厳しいのは韓国でも同じで、書店数は1990年代半ばの約5700件をピークに減少しています。ただ、カフェや雑貨を組み合わせて販売する独立系の書店は増えているそう。

わたしは弘大という町にある「THANKS BOOKS」に何度か行きましたが、現在は移転したようです。こうした小さな、でも個性的な書店は、内沼晋太郎さんと綾女欣伸さんの『本の未来を探す旅 ソウル』に詳しいです。

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『本の未来を探す旅 ソウル』
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田んぼを再利用したスケート場や、ボロ屋を逆転の発想でユーレイホテルにするなど、小説はクスッとしつつ、絵の浮かぶ描写が満載です。登場人物たちが「グッドナイト書店」を起点にした数々のイベントに夢中になっている間、このまま幸せな気持ちだけ閉じ込めておければいいのに、と思ってしまった。「スノードーム」のように。

「スノードーム」は、ゆっくりとキラキラと舞う雪を楽しむものですが、現実はそんなにゆったりばかりではいられません。家族の秘密、過去の傷、そして誰かの感情が、常に刃となって向かってくるから。

ちょっと疲れたかも、という時におすすめのロマンチックな一冊です。キラキラ揺れる雪と恋心にキュン!しちゃう。

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