韓国で「国民の妹」と呼ばれるほど大人気の歌手IUは、俳優として活動する時は、本名の「イ・ジウン」を使っています。
2011年にドラマ「ドリームハイ」で俳優デビューして以降、コンスタントに活動を続けていますが、「2018 APAN STAR AWARDS」の中編ドラマ部門で最優秀演技賞を受賞し、その実力を知らしめたドラマが「マイ・ディア・ミスター~私のおじさん~」でした。
現在、Netflixで配信されています。
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ドラマ「マイ・ディア・ミスター~私のおじさん~」https://www.netflix.com/title/80214406
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建設会社で働くドンフンに、差出人不明の5000万ウォンの商品券が届く。思わず受け取ってしまう姿を、派遣社員のジアンが目撃。監査部の調査を受けることになってしまう。ドンフンの妻は、ドンフンの会社の社長と不倫しており、これに気付いたジアンは、邪魔者を追い出してあげるとお金を要求。ドンフンの盗聴を始めるが……。
実は、第1話があまりにも暗くてドン底だったから、一度離脱していました。でも、「いいドラマだよー」という声をあちこちで聞いたので、再度挑戦。IUことイ・ジウンが笑顔を見せるのは、3回くらいしかありません。
イ・ジウン演じる「イ・ジアン」は、悲惨のひと言しかない境遇です。母の借金を抱え、障がいのある祖母の介護をし、いくつもの仕事を掛け持ちする生活。
仏頂面でニコリともしないし、借金取りにボコボコにされている様子は、まさにあれですよ……。
『ナニワ金融道』!!!
(画像はAmazonより)
そんなジアンの境遇を知り、手を差し伸べるパク家の次男坊・ドンフンは、イ・ソンギュンが演じています。「パラサイト 半地下の家族」で、お金持ちの“キム社長”を演じた、ナイスボイスな俳優です。
(画像はKMDbより)
主演はこのふたりなのですが、ドラマの主人公は「町」だといえます。古い建物が多く残る後渓(フゲ)という町が舞台で、むかしからずーーーっとここに暮らしている人たちの、濃密な人情がみどころ。
韓国ドラマは親子関係や、親戚との関係が近く、よく言えば「情が濃い」、平たく言えば「おせっかい」な印象を受けることが多いんですよね。
なのに「マイ・ディア・ミスター」は、その100倍は濃い!!
象徴的な出来事が、ドンフンが殴られたことが発覚した後です。いつもの居酒屋で飲んでいたおっさんたちが、血相を変えて集団で走っていく。警察が呼ばれちゃうほどの騒ぎになってしまうんですけど、「仲間がやられたのに、黙ってらんねー!」なんですよ。
あまりにも濃い~仲間意識をみるたび、感じました。
“外から来た人”であるドンフンの妻は、どれだけ孤独だっただろう……。
三兄弟ときたら、常に一緒なんですもん。
(画像はAmazonより)
後渓のような急坂のある町は、「タルトンネ(月の町)」と呼ばれています。
月に届きそうなほど高い場所にあるから「月の町」なわけですが、ロマンチックなネーミングとは裏腹に、貧困層の住む町でもあります。
韓国では、ここ数年、再開発ブームが続いていて、コロナ禍による不景気にも関わらず、不動産価格は高騰しています。文在寅政権は、規制を強化してきましたが、安定には至っていないようです。
ドラマ「ヴィンチェンツォ」でも、住民たちが暮らすビルに“追い出し屋”が居座って闘いになっていましたが、こうしたことは現実でも起きているのだそう。
ジアンは盗聴を通して、ドンフンの人となりを知り、後渓という町の人情に触れることになりました。でも、いずれこの町にも開発の波がやって来るのかもしれないし、町に息づく人情が永久保存されるわけでもないでしょう。
パク家の三兄弟、行きつけの居酒屋のマダム、サッカー仲間たち。何かを失い、何かに傷つき、何かをあきらめ、痛みを抱えながら、なんとか今日を生きています。
殴られたり、転んだりしてできた“外傷”は、いずれ治ります。それは人間に自己治癒力が備わっているから。でも、“心の傷”は、どこまで快復したのか、目に見える形では分からない。常に「痛い痛い」と信号を送ってくることだってあるし、忘れた頃にうずくこともある。
だから、たまには泣いてもいいんじゃないかな。自分のために。
ドラマ情報「マイ・ディア・ミスター~私のおじさん~」tvN 全16話(2018年)
監督:キム・ウォンソク
脚本:パク・ヘヨン
出演:イ・ソンギュン、イ・ジウン、コ・ドゥシム、パク・ホサン、ソン・セビョク、キム・ヨンミン
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