わたしが通っている整体のお店で、一番有名な人は「院長の奥さま」です。
先生の施術は確かだし、みなさん明るいし、奥さまはスタッフでもないんですけどね。なんならお顔も見たことない。でも、
「嫁とケンカしたんっすよ……」
という話が出ると、楽しみでなりません。
なかなかに“アクティブ”な奥さまで、ケンカして大根で殴られたとか、痛苦しくて目が覚めたら鼻に洗濯ばさみがついていたとか、数々の武勇伝があるのです。
以前、スタッフのみなさんでバーベキューをした時、奥さまも合流して一緒に飲んでいたのだそう。
「へー、楽しそうですね」
わたしが当たり障りのないコメントをしたら、若手先生が複雑な顔でモグモグしていたんですよね。後で聞いてみたら、
「マジ、怖かったっす」
とのこと。奥さまは某量販店にお勤めなのですが、「ガチのヤンキー店員がいる」とツイートされたくらい、一部地域で有名な方のようです。すげーな。
そんな奥さまが大好きという先生が、唯一観たことのある韓国映画が「猟奇的な彼女」。激しく共感して、泣いてしまったのだとか。チョン・ジヒョンとチャ・テヒョンの出世作なんですが、あまりにもピッタリで大笑いしてしまった。
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映画「猟奇的な彼女」
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大学生のキョヌは、電車で会った酔っぱらいの女性を介抱することに。翌日、その彼女に呼び出されたキョヌだが、お礼を言われるどころか、横暴な態度で連れ回されてしまう。酔っ払っていなければ理想形という彼女に徐々に引かれていくが、彼女は自分の名前も明かさないままで……。
映画が公開された2001年当時、チャ・テヒョンはともかく、チョン・ジヒョンはほぼ新人で無名の俳優でした。この映画で一気にスターになり、CMも増えたし、映画にはバンバン出続けたし、トップスターへと駆け上がりました。
一方で、「決断力のない、情けない男」の印象がついてしまったチャ・テヒョンは、ちょっと下り坂になったとバラエティ番組で語っていました。気の毒……。
まー、それも仕方がないと思えるほど、チョン・ジヒョンの勢いがあります。
原作は、キム・ホシクという大学生がネットで公開していた小説です。基本モチーフは、ファン・スンウォンの短編小説『夕立』で、田舎の少年が病弱な少女と出会って恋に落ちるという初恋ものなんです。
それがなぜ「猟奇的」なんてオソロシイ名前を付けたんだろうと思いませんか?
映画が日本で公開になった頃、知り合いの韓国人に聞いてみました。この頃、韓国で一大ブームになっていたのが「ヨッキトッキ(へんてこウサギ)」というぬいぐるみです。
(画像はソウルナビより)
かわいい見かけとは裏腹に、けっこう意地悪なことをやらかすキャラクターで、その“やさしくない”ところが、“猟奇的”という言葉の由来になっているのだそう。
そして、このウサギの“猟奇的”な部分が、“彼女”のキャラクターに引き継がれているようです。
ウェブ小説から映画化という展開は「電車男」だけど、キャラクター設定は「チコちゃん」的といえるかも。
正義感が大暴走したり、ボカスカ殴ったり、悪態をついて回ったり。ただの通りすがりだったのに、なぜか後始末をさせられるキョヌ。
(画像はKMDbより)
だんだんと彼女に引かれていくのですが、映画は後半でガクッとギアチェンジ。
なぜ、彼女はあれほどまでに暴力的なのか。
なぜ、何に対しても全力投球で怒っているのか。
その理由が明らかになった時、全力で生きることの大切さがシャワーのように降り注いできます。
現在、Amazonプライムで配信されていて、20年振りに観てみました。やっぱ、いい映画だなー。恋愛映画では、韓国映画史上第1位のヒット作というのもうなずけます。チャ・テヒョンの“ザ・いい人”は際立っているし、チョン・ジヒョンはかわいいし。
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映画の公開後、チョン・ジヒョンの色白肌メイク×ストレートのロングヘアは、大流行しました。この頃はまだ濃いめのファンデーションが多かったんだけど、この後くらいですかねー。透明感を活かしたメイクをするようになったのは。
どんな目に遭っても、好きにならずにはいられない人っています。そんな人に出会ってしまうことこそ、生きがいを得ることなのかもしれません。整体の先生夫婦も、実は仲良し夫婦です。
会うたびに、ご無事を祈ってしまうけど。
映画情報「猟奇的な彼女」122分(2001年)
監督:クァク・ジェヨン
原作:キム・ホシク
脚本:クァク・ジェヨン
出演:チャ・テヒョン、チョン・ジヒョン、キム・インムン、ソン・オクスク、キム・イルウ
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