血のつながらない母娘による葛藤が、代々と引き継がれてしまう哀しさ。これは、逃れられない運命なのだろうか。
「コインロッカーの女」は、そんなどす黒さが全面に押し出された映画でした。たぶん韓国映画では、女性によるノワール劇ってあんまりなかった気がします。
☆☆☆☆☆
映画「コインロッカーの女」
DVD
Netflix
https://www.netflix.com/title/80196152
☆☆☆☆☆
生まれた直後に、地下鉄のコインロッカーに捨てられた女の子の赤ん坊。イリョンと名づけられた彼女は、仁川のチャイナタウンで闇貸金業を営む「母さん」に育てられる。成長し、組織の一員として働くようになったイリョンは、一切の感情を捨てて命令を忠実に実行するだけの日々を送っていた。そんなある日、父の借金を背負わされた青年ソッキョンの元へ取り立てに行ったイリョンは、不幸な身の上でも前向きに生きようとするソッキョンに惹かれてしまう……。
「トッケビ〜君がくれた愛しい日々〜」で愛らしい女子高生を演じていたキム・ゴウンが、ガラリとイメージを変えてタフな世界に生きる、孤独なイリョンを熱演。
(画像は映画.comより)
そして、かっこいい姐御姿に「一生ついていきますーー!!」と言いたくなっちゃうキム・ヘス。迫力たっぷりの“母さん”を演じ、第35回韓国映画評論家協会賞などで主演女優賞を受賞しています。
キム・ヘスって、基本の作りが「美人型」なので、映画「10人の泥棒たち」でドレスアップした姿なんか惚れ惚れするくらいなんです。
(画像はKMDbより)
なのに。
「コインロッカーの女」では。
ぶよぶよのお腹に、傷んだ肌での、堂々たる演技! その迫力!
(画像は映画.comより)
こういう、本気の役作りによる見せ方が好きなんですよね、わたし。
以前、とある日本映画で、キレーな女性がお布団に横になっていて、側に座っていた女の子がシクシク泣き出す。「死なないでー! おかーさまー!」みたいなセリフがあって、やっと女性が病気なことに気付いた……ということがありました。
でも、韓国の俳優って、「汚す」ことを厭わない覚悟があるなと感じます。
キム・ヒャンギちゃんなんて、めちゃくちゃラブリーなのに、「神と共に 第二章 因と縁」では徹底的に「こきちゃなく」されちゃってるんだもん。
(画像は映画.comより)
このストーリーに必要なら、やる。
その本気に惹かれてしまうのです。
おっと、話が映画から離れてしまった。
映画の原題は「チャイナタウン」で、ヤクザな組織で行われている金貸しと臓器売買が描かれます。
父が高飛びしちゃっても、純粋に信じて待っている青年を演じるのはパク・ボゴム。この人の、純真で、誠実で、無垢な感じがハマっていました。邪な感じがナッシングなの。
そんな青年と親しくなり、初めて人間として扱われたイリョンは、心が揺れてしまうんです。ところが、“娘”の変化を見逃さない“母”。
この母と娘をつなぐのは、血でもないし、信頼でもない。支配の力から抜け出そうとする、壮絶な対決がみどころです。
でも。
母を乗り越えたとしても、その手が血で汚れている限り、因縁を消し去ることはできるのだろうか。愛されたことのない少女の、行く末が気になってしまうのでした。
映画「コインロッカーの女」111分(2015年)
監督:ハン・ジュニ
脚本:ハン・ジュニ
出演:キム・ヘス、キム・ゴウン、パク・ボゴム、コ・ギョンピョ、イ・スギョン、チョ・ヒョンチョル
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