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『天海の秘宝』#883


伝奇ものの小説を書き継いでいる夢枕獏さん。『陰陽師』はじめ、どれもおもしろいんですが、ひとつだけ言いたいことがあるのです。

話を完結させてください!!!

「キマイラ」シリーズなんて、1982年に始まって、まだ終わってないんだもん。まぁ、楽しみは続く、ともいえますがね。

そんな中で、『天海の秘宝』は大長編だけれど、ちゃんと完結している!!!という点で、超おすすめです。

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『天海の秘宝』

(画像リンクです)

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異能のからくり師・堀河吉右衛門と、天才剣士・病葉十三がコンビを組んで、江戸の町に起きる怪異を推理するというストーリー。

初めは小さな事件だったものが、だんだんと大きくなり、ついには一連の出来事が、天海僧正の秘宝に関連していることが分かってきます。

天海僧正とは、徳川家康の側近だった大僧正で、神号や葬儀に関する遺言を預かった人でもあります。あの「あずみ」を導いたお坊さんですね。

(画像リンクです)

江戸の町づくりにも大いに力を発揮し、陰陽道や風水に基づいた都市計画を行ったといわれています。

そんな天海僧正が江戸の町に埋め込んだ秘宝とは……という展開は、ワックワク~なんですが、いかんせん長編なのでおもしろくなるのは下巻からです。

たとえるなら、中村吉右衛門さん演じる「鬼平」に、「ターミネーター」がツッコんできて大暴れ!みたいなお話。こういう奇想天外なものがお好きな方にはたまらん読み物です。

その分、現実主義な方には、わけ分かんないかもしれない。

すべてが理路整然と、ロジカルにできあがっているわけではないんですよね。人間って。


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