空海(弘法大師)は、日本で一番名前を知られているお坊さんかもしれません。
803年に、遣唐使のひとりとして唐に渡りますが、この時の空海は、まだまったく無名の僧侶だったのだとか。
恵果和尚に師事し、密教の奥義を伝授されたと伝えられています。
行きも帰りも嵐に遭っている空海。
そこでは何が起きていたのか。
夢枕獏さんの『沙門空海唐の国にて鬼と宴す』は、史実を基に想像力の羽を大きく広げた小説です。
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『沙門空海唐の国にて鬼と宴す』
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『陰陽師』や『JAGAE 織田信長伝奇行』など、史実がベースとなっている小説の中でも、この『沙門空海唐の国にて鬼と宴す』は特別でした。
なんというか、空海がかっこいい!
まだまだ「小坊主」クラスであるにも関わらず、密教の真髄を「盗みにきた」と豪語する空海。現代なら「ビッグマウス」と揶揄されてしまいそうなんですが、彼の内から湧き出る自信に圧倒されてしまうんですよね。
当時の長安は世界最大の都市だったそうで、人種的にも文化的にもグローバルな町でした。そんな異国の町で翻弄されつつ、空海は信心を崩さない。
長安の町を襲った怪異に立ち向かう空海&橘逸勢コンビは、さながら安倍晴明&源博雅コンビのようなもの。ナイスな掛け合いも楽しめます。
空海は曼荼羅や密教法具、経典などを日本に持ち帰りました。これを整理して学校をつくり、真言宗を開きます。
高野山総本山のホームページによると、真言宗の特徴はこちら。
真言宗とは、仏と法界が衆生(しゅじょう)に加えている不可思議な力(加持力・かじりき)を前提とする修法を基本とし、それによって仏(本尊)の智慧をさとり、自分に功徳を積み、衆生を救済し幸せにすること(利他行・りたぎょう)を考える実践的な宗派と言えます。
空海の行動は利己的にも見えるけれど、その奥には彼なりの計算があったのかもしれない。そんな深読みをしながら読むと、さらに楽しめると思います。
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