韓国の映画も食べ物もドラマも音楽も好きな分、もっと政治が洗練されればいいのになと感じることがあります。
大統領経験者が退任後に向かう先。それが刑務所、という事態が続いたからです。
逮捕はされなかったけれど、自ら命を絶ってしまったのが盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領。第16代大統領として、2003年2月から2008年2月まで務めました。
貧しい家庭の出身で、勉強はできたものの進学することができず、高卒で就職。日雇い労働をしながら司法試験を受けて、弁護士になり、その後、政界に進出しました。
苦労した若かりし頃から、ビジネスセンスに長けた金満弁護士時代、そして人権派弁護士と呼ばれるまでの姿は、ソン・ガンホ主演で映画化されています。
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映画「弁護人」
DVD
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1980年代初頭、軍事政権下の韓国。税務弁護士として多忙な毎日を送っていたソン・ウソクは、若い頃に世話になったクッパ店の息子ジヌが、国家保安法違反容疑で逮捕されたことを知る。拘置所へ面会に行ったウソクは、ジヌの信じられない姿に衝撃を受け、弁護を引き受けることにするが……。
ヤン・ウソク監督の長編デビュー作となった「弁護人」。国民的人気の高かった大統領の、若き頃の奮闘といったテーマから、実は敬遠していたのでした。
ヨイショされたストーリーだったら残念だなと思っていたのですよね。
ラストシーンで、ボロボロ泣きました……。
ソン・ガンホ演じるソン・ウソクは、苦労して弁護士資格をとって活動を始めますが、一流大学出身の弁護士先生たちからはバカにされるばかり。司法書士がやっていたような仕事を始めて、ビジネスとして成功します。
その後もローファームを作ろうとしたりと、ビジネスセンスに優れていた人物として描かれています。
そんなソン・ウソクを「人権派」へと変えたのが、「プリム事件」と呼ばれるえん罪事件でした。
読書会を開催していただけの大学生が「アカ」として検挙され、拷問される。イム・シワンの脅えた様子が真に迫っていて、ホントに怖かった。
(画像は映画.comより)
お世話になった方の息子だからと弁護を引き受けたソン・ウソク弁護士。彼の裏をかき、学生たちを暴行し、証言者を陥れる刑事を演じるのは、クァク・ドウォン。キターーーーって感じがしちゃう。
(画像は映画.comより)
大学生たちを弁護してくれる人が、誰もみつからなかったことを考えると、ソン・ウソク弁護士が検挙されたラストシーンは、人々の意識の変化を感じさせます。
もっと政治が洗練されればいいのにという思いは、ヤン・ウソク監督自身にもあるのかもしれません。80年代の民主化運動を描いたこの映画。そして南北関係の皮肉をテーマにした「鋼鉄の雨」シリーズ。
人々の中にたまった憤懣を、みごとに映画に映しているなと感じます。見切れた人物の切迫感と、手持ちカメラのブレブレした効果は、どの映画にも共通していました。
「スティール・レイン」はまだ公開している映画館もあるので、よかったらぜひ、劇場でどうぞ!
映画「弁護人」127分(2013年)
監督:ヤン・ウソク
脚本:ヤン・ウソク、ユン・ヒョノ
出演:ソン・ガンホ、クァク・ドウォン、イム・シワン、キム・ヨンエ、チョン・ウォンジュン、イ・ソンミン、オ・ダルス
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