「旅の過程にこそ価値がある」
そう語ったのは、スティーブ・ジョブズです。旅には「目的地」があるものですが、そこに行くまでの「過程」だって旅。
目にするもの、耳にするもの、味わうもの、すべてが、自分の一部になる。
そんな旅の醍醐味を人情劇として味わえる小説が、原田マハさんの『旅屋おかえり』です。
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『旅屋おかえり』
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北海道の離島から上京し、タレントとして活動していた丘えりか。唯一のレギュラー番組「ちょびっ旅」が打ち切りになり、代わりに始めたのが「旅屋」です。病気などの事情を抱えた人から依頼を受けて、その人が行きたかった場所を旅する「旅の代理人」になる、というお話。
丘えりかの愛称「おかえり」の旅は、決まったルートもなく、予定ギチギチでもなく、気分任せなところが大。初仕事として秋田に向かいますが、名所を回るわけでもない。
その分、ホントーーーに、「旅を楽しんでいる」姿がにじみ出てくるんです。
人はひとりでは生きていけない。誰かに支えられ、誰かを支え、ようやく生きていけるもの。だけど、自分から手を伸ばすのは勇気がなくて……。
そんな時に、「おかえり」が媒介となって、ご縁の糸を結び直していく。
なんだかとてもリラックスして、一緒に旅の「過程」を楽しむことができますよ。読むと、旅がしたくなってしまうところが大問題。
またまた気軽にお出かけでなくなりそうな気配ですが、せっかくだから1か月ずつ道府県を滞在しながら仕事する、なんて旅でもしてみようかしら。
旅人といえば、わたしはスナフキンが好きで、彼もこう言っています。
「『そのうち』なんて当てにならないな。いまがその時さ」
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