毎日毎日、開いてしまうゲームアプリに、流れてくる広告があります。
島で暮らしている男女がいて、女性が妊娠検査薬を男性に見せるんです(無人島っぽいところに、なんでそんな文明の利器があるのかはナゾ)。赤い線が入った検査薬を男性は、やっほーい!と喜んでみせ、引っ越しを提案。イカダに荷物と女性を乗せて、蹴り出してしまう……という、めちゃくちゃシュールな広告です。
男が女を妊娠させて捨てる話は、近代文学にも例が多いそうで、文芸評論家の斎藤美奈子さんは、これらのパターンに「妊娠小説」と名付けました。
いまでは毒舌と皮肉がトレードマーク(?)の斎藤美奈子さんのデビュー作です。
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『妊娠小説』
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森鷗外や島崎藤村、三島由紀夫に石原慎太郞など、近代以降の「大作家」と呼ばれる小説家の作品が俎上にのっています。
そして、小説の中で「望まない妊娠」に直面したときの態度を分類。男性も女性も、マジメも蓮っ葉も、みんな結構ステレオタイプなことが分かってきます。
それは作者自身の頭が偏っているからなのかもよ、というお話。
解説には、「文学はこんな風に読むもんじゃない」と編集者に怒られた話が紹介されていました。が、この評論こそ、文学をエンタメする好例だと思うんですけどね。
特に、石原慎太郎の『太陽の季節』へのツッコミは、ノリノリ・イケイケ感が突き抜けていて、思わず小説を読んでみようかと思ってしまった。どうやっても好きになれないので読まないけど……。
柚木麻子さんの小説『らんたん』には、女性が死ぬことで文学的な表現になると主張する男たちに声を荒らげるシーンがあります。
人生の一大イベントといえる「妊娠」。文学の中でも、女性は便利な駒として扱われてきたのだろうか。
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