韓国ドラマや映画を観ていると、次々に実力のある若手が登場するので楽しみでなりません。わたしがずっと注目していたひとりが、ユ・アインです。
2006年に「俺たちに明日はない」で映画デビュー。ドラマでは「トキメキ☆成均館スキャンダル」や「ファッション王」、「チャン・オクチョン-張禧嬪-」などで観ていましたが、一番よかったなーと思うのは「密会」です。年上の人妻に恋してしまう純粋で一途な天才ピアニスト役でした。
このドラマが放送されたのが2014年。そして翌年、彼にとって転機となる映画が公開されます。初の悪役を演じた「ベテラン」です。
続いて出演した映画「王の運命(さだめ) 歴史を変えた八日間」で名優ソン・ガンホの演技にがっつり食らいつき、青龍映画賞の主演男優賞を受賞しました。
人気に実力がついてきたなーと実感する映画でしたね。2018年に公開された映画「バーニング」では、名匠イ・チャンドン監督の作品に出演。この映画は、2018年大鐘賞映画祭で最優秀作品賞を受賞、第71回カンヌ国際映画祭で国際批評家連盟賞を受賞しています。
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映画「バーニング 劇場版」
DVD
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アルバイトで生計を立てるジョンスの夢は小説家。幼なじみのヘミと再会し、彼女がアフリカ旅行をする間、飼い猫の世話を頼まれます。旅行から戻ったヘミは、アフリカで知り合ったお金持ちの男ベンと一緒でした。ヘミに惹かれていたジュンスはかなりモヤモヤ。ある日ヘミが姿を消してしまいます。ジュンスは必死で彼女の行方を捜すのですが……。
原作は村上春樹の短編小説「納屋を焼く」だそうです。かなり大胆に脚色されているそうで(原作を読んでない…)、これは脚本家のオ・ジョンミがイメージを膨らませた結果とのこと。
映画製作のきっかけは、NHKからイ・チャンドン監督に「村上春樹原作で短編を撮ってほしい」と依頼があったことらしいのですが、その後、版権問題で立ち消えになってしまい、イ・チャンドン監督とオ・ジョンミで仕上げたようです。
映画の中にも登場するウィリアム・フォークナーの短編『納屋を焼く』も参考にしたそうで、格差、父の存在、そして復讐といったモチーフが見てとれます。
主な登場人物は3人。全員、なにを考えているのか分かりません!!!
でも、その不気味さがとてもいいんです。
中でも、主人公のジョンス役を演じるのがユ・アインとは、皮肉なキャスティングだなと感じます。直近の映画では「財閥のドラ息子」だったんです。ワガママ放題やりたい放題だったのに、今度は自分がそれをやり返される。
「役に立たなくなった古いビニールハウスを燃やすのが趣味」と語るベン。利己的という言葉さえ届かないような「持つ者の発想」は、「持たざる者」であるジョンスには理解できないものです。アルバイトの面接のシーンで、彼は名前ではなく“番号”で呼ばれ、反発して飛び出してしまうのですが、その後が……衝撃。
熱中するものをみつけたいと願う若者の青春ともとれるし、金持ちの道楽に踊らされたミステリーとも考えられます。
「真実」は誰にも近づけないところにあるのかもしれません。
そんな彼が出演した最新映画が「国家が破産する日」です。ラジオニュースから国家の危機を予感し、銀行を辞めて投資家へと転身。一世一代の賭けに身を投じるユン・ジョンハクを演じています。彼の口癖はこれ。
「俺はなにも信じない」
「ベテラン」「バーニング 劇場版」とセットで観るのがおすすめです!
「国家が破産する日」は街角のクリエイティブに書いたコラムがあるので、よかったらこちらもご覧ください。
映画情報「バーニング 劇場版」148分(2018年)
演出:イ・チャンドン
脚本:オ・ジョンミ、イ・チャンドン
原作:村上春樹
出演:ユ・アイン、スティーブン・ユァン、チョン・ジョンソ
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