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人は、誰かの奇跡になれるだろうか? ドラマ「椿の花咲く頃」 #381


韓国ドラマ界は現在、ケーブルテレビ局で制作されるドラマが圧倒的な強さを見せています。その昔、多くの国民的ドラマを生み出した地上波局制作のドラマは、すっかり影が薄くなってしまったような。

なにしろ製作費が違います。Netflixオリジナルシリーズ「キングダム」なんて1本あたりの制作費が約20億ウォン(約2億円)。これをすべてNetflixが負担したらしいので、アムアムしちゃいますよね。


ヒョンビン主演のミステリー「アルハンブラ宮殿の思い出」は、ケーブルテレビ局のtvNが制作していますが、こちらもスペインロケやCG使い放題の映像でとてもリッチに仕上がっていました。


ですが、本来のドラマなら、大金をかけたり、派手なセットがなかったりしても、シナリオと演技で視聴者の心をつかむことができるはず。

それを証明してみせたのが、KBSドラマ「椿の花咲く頃」でした。現在、Netflixで配信中です。

☆☆☆☆☆

ドラマ「椿の花咲く頃」

Netflix配信
https://www.netflix.com/title/81144925

☆☆☆☆☆

<あらすじ>
シングルマザーのトンべクは、田舎町のオンサンで「カメリア」という居酒屋を始めます。まだ若く、美しいトンベクは、地元のおばさんたちの嫉妬の対象に。商店街の会長だけが味方です。 一方、幼い頃から正義感が強く、民間人にもかかわらず数々の事件を解決したファン・ヨンシクは、特別枠で警察官に。地元オンサンの交番勤務となり、トンベクに一目惚れしてしまいます。しかし町では長年未解決だった無差別事件の犯人が動き出したようで……。


トンベクを演じるコン・ヒョジン。少女のようなフワフワ感と、母に捨てられたことから来る気の弱さ、ひとり息子を全力で愛するけなげさを、最高レベルの“モジモジ”で演じています。

そう、コン・ヒョジンは身長173cmという抜群のスタイルを持ちながら、なぜかいつも“モジモジ”した役を演じているんです。そこがいじらしい。

このトンベクの母を演じているのが、「パラサイト 半地下の家族」でキョーレツな印象を残した家政婦のイ・ジョンウンです。怪しさ満載で登場したあたりは、映画を彷彿させました。

(画像はIMDbより)


そして超絶ポジティブで熱血正義の汗を振りまきまくるファン・ヨンシクは、カン・ハヌルが演じています。うざいくらい暑苦しいのですが。

ポジティブワードは人生を変えるのかもしれない。

第56回百想芸術大賞で男性最優秀演技賞を受賞したほどの熱演をみて、そんなことを考えました。


“韓国のゴールデン・グローブ賞”と呼ばれる同賞で「椿の花咲く頃」は、ドラマ部門の大賞や脚本賞など、4冠を達成。シナリオと演技がいいドラマを作ることを証明したのです。

実際、とてもバランスのいいドラマだったなと思います。

ラブコメの核となる純愛と親子愛や隣人愛、そしてサスペンスと、目を引く展開が続きます。「愛の不時着」や「梨泰院クラス」のヒロインたちはイケイケな強さが魅力でしたが、“モジモジ”のトンベクが見せるのは別のタイプのヒロイン像です。

地味で、自分の思いを口にすることが苦手で、引っ込み思案。ですが、不当な要求をする常連のおっさんに、“モジモジ”と言うのです。

「うちはお酒を売ってるんです。笑顔は売ってません」

いいねー! トンベク!

すっかりファンになった瞬間でした。ちなみに、彼女が開いたお店の名前は「カメリア」。「トンベク」とは韓国語で「椿の花」を意味するので、自分の名前を店の名前にしたんです。


「お母さんに捨てられて、孤児院で育って、勉強もできない。結婚もしてない。なのにこんなわたしでも、お店が持てた」

そう喜ぶトンベク。普通の庶民が普通に暮らす町で、一日一日を一生懸命に生きる。そんな人生はどれほど奇跡的なことで、素晴らしいことなのか。脚本家のイム・サムチュンがドラマを通して描いているテーマです。

「人は、誰かの奇跡になれるだろうか?」

暑苦しい男にポジティブワードのシャワーを浴びせられて、“モジモジ”のトンベクは進化するのか。胸キュンとはひと味違う、胸熱ドラマです。


ドラマ「椿の花咲く頃」KBS 全20話(2019年)

監督:チャ・ヨンフン

脚本:イム・サンチュン

出演:コン・ヒョジン、カン・ハヌル、キム・ジソク、オ・ジョンセ、ヨム・ヘラン、ソン・ダンビ、キム・ソニョン、キム・ガンフン

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