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ドラマ「ナビレラ -それでも蝶は舞う-」#665

 


70歳のおじいちゃんが、バレエにチャレンジ!?
設定が斬新だったドラマ「ナビレラ -それでも蝶は舞う-」に、めちゃくちゃ励まされた。ただ好きだからというシンプルな強さに圧倒されます。

毎日、いろんな言い訳にまみれて生きていることに気付いてしまったドラマでした。

☆☆☆☆☆

「ナビレラ -それでも蝶は舞う-」Netflixで配信中

☆☆☆☆☆

<あらすじ>
郵便配達員として家族のために懸命に働いてきたドクチュル。友人の葬式の帰りに、バレエダンサーの青年チェロクが踊る姿を目にする。子どもの頃にバレエダンサーに憧れたものの、やらせてもらえる環境にはなく、夢を見ることさえあきらめていたことを思い出したドクチュル。70歳を迎え、あらためて夢に挑戦しようとするが、家族に大反対され……。

友人を亡くしたことをきっかけに、夢だったバレエを始めた“ドクチュル”が主人公です。御年70歳! 演じるパク・インファンさんは1945年生まれなので、現在76歳!

ストレッチをして、筋トレをして、それでもポーズをとるだけで精一杯……という姿は、役と重なって見えます。かなりガチでしょうねぇ。

そんな“ドクチュル”を指導するバレリーノ“チェロク”は、注目の若手俳優ソン・ガンさんが演じています。

現在Netflixで配信されている「Sweet Home -俺と世界の絶望-」でも主演しているのですが、こちらは高校生役。おまけにディストピアが舞台なので、ダボッとしたボロボロの服を着ているんです。


だから、知らなかった……。

めちゃくちゃムキムキやな!!!

23歳でスランプに陥る天才バレリーノ役ということで、半年近くバレエの特別レッスンを受けたのだそう。逆光のバレエシーンが多いのは“オトナの事情”でしょうけれど、とても美しかったです。

“ドクチュル”の妻ヘナムを演じるナ・ムニさんとパク・インファンさんは、映画「クワイエット・ファミリー」や「怪しい彼女」でも夫婦役を演じています。そのおかげか、息もピッタリ。

貧しい時代に生まれて、生きることで精一杯だったおじいちゃんが夢に向かって突っ走ろうとしているのに、豊かな時代に生まれた若者の方は夢がないというところは、いかにも現代的なストーリーといえるかもしれません。


タイトルの「ナビレラ」とは、「蝶のように」という意味です。

人間って、家族のために、お金のために、怪我のためにと、つい努力を放棄する言い訳を探してしまうものですよね。だからこそ、“ドクチュル”の、ただ好きだから踊りたいというシンプルな強さに圧倒されます。

蝶のように、空高く飛んでみたい。

家族に反対されても、みっともないと笑われても、夢をあきらめない“ドクチュル”。実は彼には、家族にも秘密にしている理由があったのでした。


元郵便配達員だった“ドクチュル”の、人柄のよさを感じさせるエピソードがあります。

“チェロク”を口説き落とし、生徒にしてもらう代わりにマネジャーを買ってでた“ドクチュル”。一緒にご飯を食べていると、“チェロク”がサラダの上のニンジンをせっせとよけているんです。

普通のオトナだったらきっと、「身体にいいんだから食べなさい!」と言うところですよね。でも“ドクチュル”は、メモ帳に「ニンジンが嫌い」とメモするだけなんです。

ただ、個性として受け止めるだけ。もう、このシーンだけで、“ドクチュル”に惚れました。笑顔がキュートなパク・インファンさんの熱演にも、何度も涙……。

だから二人三脚で歩いてきた妻のヘナムにも、夢をつくってあげてほしかったなと思います。3人の子どものために、すべてを捧げた「The 母」というおばあちゃんなので。

問題だらけの師弟コンビは、舞台に立つことができるのか。ウルウル・ハラハラしながら一気見してしまいます。そして、ラストメッセージ。

いまからでも遅くありません。
70歳のドクチュルのように、あなたにもできます!

とても勇気づけられるドラマです。


ドラマ「ナビレラ -それでも蝶は舞う-」全12話(2021年)

監督:ハン・ドンファ

脚本:イ・ウンミ

原作:HUN『ナビレラ』

出演:パク・イナン、ソン・ガン、ナ・ムニ、ホン・スンヒ

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