ここ数年の韓国ドラマの特徴といえば、なんといっても「お金かかってます!」だと思います。
CG技術の向上から、映画並みのゴージャスなシーンが展開されたり、Netflixから資金を受けて海外ロケやセットを豪華にしたり。
そんなリッチなドラマが増えている中で、ひときわ地味なドラマがNetflixオリジナル作品「ムーブ・トゥ・ヘブン:私は遺品整理士です」でした。でも、これがもーーーーーひたすらグッときた。ベタ of ベタなストーリーではあるのですが、「命」の重さ、それを引き受けて生きることの意味を問うています。
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「ムーブ・トゥ・ヘブン:私は遺品整理士です」現在、Netflixで配信中
https://www.netflix.com/title/80990381
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「犬どろぼう完全計画」「お料理帖 息子に遺す記憶のレシピ」のキム・ソンホ監督が、ユン・ジリョン脚本家とタッグを組んだ作品です。
主人公は、父を失い一人ぼっちになったアスペルガー症候群の青年ハン・グル。演じるのはタン・ジュンサン。「愛の不時着」で北朝鮮兵士の末っ子兵士を演じた彼です。
(画像はタン・ジュンサンのInstagramより)
おぼこい青年兵士の雰囲気はそのままに、「普段通り」が少しでもズレるとパニックになってしまう純真な青年を演じています。
そんなハン・グルの後見人に指名されたのが、イ・ジェフン演じる叔父のサングです。刑務所を出たばかりのチンピラで、ガサツで、口が悪くて、お片付けも苦手。「シグナル」で見せた几帳面な刑事とは正反対の設定ですね。
大好きな父の弟らしいけど、なんだよこいつー!!!とばかりに、ふたりは衝突を繰り返してしまいます。
亡くなった人の「遺品整理」の仕事を、父と一緒にやっていたハン・グル。ひとり残されても父の教えを反芻しながら、遺品が示す「亡くなった人の声」に耳を澄ませるようになっていく。
遺族に最期の思いを伝えたり、事件の犯人を見つけたり。
でも常に頭にあるのは、父に会いたい。叔父がうざい。
誠実にきちんきちんと仕事やりとげる甥の姿を、サングはナナメに見ています。兄(ハン・グルの父)との関係から、見事にこじらせてるんですね。地下格闘技の選手として生計を立てていた過去の出来事も、誰も信じられない自分自身も。
ハン・グルと一緒に遺品整理の仕事をする中で、さまざまな事情を抱えた人が、さまざまな理由で亡くなる状況を知り、遺されたさまざまなモノを目にして。
なにも思わないわけがない!!
キム・ソンホ監督の映画でテーマとなっていた、家族の秘密と愛は、ドラマでも存分に発揮されていました。とにかく泣けるシーンばかりです。各エピソードごとに、豪華なキャストが出演しています。亡くなる役だけど。
原作はキム・セビョルさんのエッセイ『旅立った後に残されたもの(原題:떠난 후에 남겨진 것들)』。ドラマ化にあたっても、絵的に派手なシーンはなし。ですが、とことん絞り込まれた人間ドラマが見どころです。
社会から取り残された人々。コミュニケーションの不足。目に見える事象の裏には、しまい込まれた想いがあります。そして、死を見つめることが、いまを生きる姿勢につながっていく。
全10話と短いので、セリフを噛みしめながら、ゆっくりと観たいドラマです。
ドラマ情報「ムーブ・トゥ・ヘブン:私は遺品整理士です」Netflixオリジナル作品 全10話(2021年)
演出:キム・ソンホ
脚本:ユン・ジリョン
原作:『旅立った後に残されたもの(原題:떠난 후에 남겨진 것들)』キム・セビョル、チョン・エウォン
出演:タン・ジュンサン、イ・ジェフン、チ・ジニ、ホン・スンヒ、チェ・スヨン、イ・ムンシク、イム・ウォニ
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