古今東西、若者って、おバカで、熱くて、無邪気で、無鉄砲なもの。
そんな若者を、押さえ込むのか、上手におだてて伸ばしていくのかで、組織は変わっていくのかもしれません。
キム・ジュファン監督5本目の映画となる「ミッドナイト・ランナー」は、警察大学の学生ふたりが夜の街をひたすら走っている映画です。
なぜ?
事件を目撃したのに、警察が動いてくれないから!
来る未来の不条理を感じつつも、被害者を救いたいという正義感で突っ走るふたり。コミカルとシリアスがほどよく入り交じったストーリーです。
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警察大学に入学した肉体派のギジュンと頭脳派のヒヨル。試験で助け合い、親友となったふたりは、外出先で偶然、拉致現場を目撃する。学校で学んだとおり警察に通報するも、相手にされず。時間だけが過ぎていくことに焦り、ついに自ら捜査を始めるが……。
肉体派のギジュンをパク・ソジュンが、頭脳派のヒヨルをカン・ハヌルが演じています。
キム・ジュファン監督×パク・ソジュンのコンビでつくったもう一本の映画が「ディヴァイン・フューリー 使者」。こちらは名優アン・ソンギと力を合わせて悪魔と闘う物語です。
どちらの映画も、若者とベテランの対立と協力がみどころのひとつなのですが、「ミッドナイト・ランナー」では、若者をたしなめる役どころだったヤン教授役のソン・ドンイルが、めちゃくちゃいい味を出しています。
「夜の街に繰り出して、女の子をナンパして青春したいです!」という秘密の思いを受け取り、送り出す時の笑顔。
事件性を認識しながらも、煩雑な手続きが必要なことを伝える渋い顔。
そして、問題行動を起こしたギジュンとヒヨルを退学にせよ、と迫るエライさんたちに立ち向かう時の毅然とした表情。
正義感が空回りしてアタフタ・ドタバタしている主役ふたりの演技を引き立てる、どっしり感をみせています。
(画像はBizEnterより)
劇中、ギジュンとヒヨルの部屋にはTWICEのポスターが飾ってあり、お忍びで映画を観たTWICEのジヒョとジョンヨンが大喜びしたのだとか。
そんなコミカルでほのぼのした部分シーンがある一方で、シリアス要素として登場するのが、大林洞に住む朝鮮族です。大林洞はソウルから30分くらいの郊外にある町で、出稼ぎにやってきた中国の朝鮮族が定住し、チャイナタウンとなった場所。
大林洞はあまり治安のよくない場所らしく、劇中でもタクシーの運転手さんが「あんまり出歩かない方がいいよ」と忠告するほどでした。
ギジュンとヒヨルが目撃した拉致事件には、その朝鮮族が絡んでいたのですが。
ただ。
実際にそこで映画のような犯罪行為が組織的に行われているかどうかは、話が別。映画の公開後、在韓朝鮮族団体が抗議し、裁判にまでなりました。
朝鮮族が、悪の巣窟やマフィアとして描かれた映画はたくさんあり、わたしも無邪気に観ていた気がします。
実話をもとに、警察と韓国ヤクザ、中国マフィアの抗争を描いたマ・ドンソク主演の映画「犯罪都市」にも朝鮮族が登場。
「女は冷たい嘘をつく」でも、コン・ヒョジン演じる中国から韓国の農村に嫁いだ朝鮮族の女性が、謎のカギを握っています。
表現の自由か。特定の集団への偏見や反感を引き起こす嫌悪表現か。こうした区別の事例として、ホン・ソンスさんの『ヘイトをとめるレッスン』でも紹介されています。
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原題の「青年警察」には、警察官未満であることと、若さ溌剌な警察官であること、ふたつの意味がありそうですが。若いからって「無邪気」ではいられない。制作時にはもっともっと繊細なチェックが必要なのだなと思わされました。
とはいえ、熱血で愉快なふたりの掛け合いは、楽しめました。エンドクレジットには「青年警察は、いつの日か戻ってきます」との表示も。
いまやドラマでも引っ張りだこのふたりですが、いつかリターンするかもしれません。エンタメで、誰かを傷つけることのないように。その時はもっと洗練された表現がなされるかもしれません。期待してる!
映画情報「ミッドナイト・ランナー」108分(2017年)
監督:キム・ジュファン
脚本:キム・ジュファン
出演:パク・ソジュン、カン・ハヌル、パク・ハソン、ソン・ドンイル、イ・ホジョン
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