「八咫烏シリーズ」最新作の『烏百花 白百合の章』は、人が人を想うことの喜怒哀楽ぜんぶがつまっていました。
人間の姿に変身することが出来る八咫烏の一族と、山内(やまうち)の政争を描いた、阿部智里による異世界ファンタジーも、これで8冊目。
『烏百花 白百合の章』は、外伝として本編の裏側にあるエピソードをまとめたものです。
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『烏百花 白百合の章』
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人間界とは隔てられた山内(やまうち)で暮らす、八咫烏たち。その長である金烏(きんう)が統治する社会なのですが、金烏って、役柄の名前ではなく、性質なんですね。そして、そんなに次々と生まれてこないんです。空白期や、継承期に、宗家と東西南北の各家は対立したり、懐柔したり。
本編の方では、天敵・大猿とのバトルや、人間の介入が始まって、ちょっときな臭い雰囲気になってきました。でも外伝は、細やかな心情がていねいに書き込まれていて、ウルッとくることも。
笛の音がつなぐ、許されない恋は、「陰陽師シリーズ」の博雅を彷彿させました。中央の楽団を目指す貧しい兄弟。才能に恵まれていた兄は、恋に落ちたことで、自分の音楽を見失ってしまう。
のびやかな音か、つややかな音か。
お相手の女性のひと言に、戦慄するラストが待っています。
読む順番はこちら。本編は順に読んだ方がいいかもしれません。外伝『烏百花 蛍の章』も短編集なので、まず世界観を味わいたいという方には、これがおすすめです。
<第一部>
第一巻『烏に単は似合わない』
第二巻『烏は主を選ばない』
第三巻『黄金の烏』
第四巻『空棺の烏』
第五巻『玉依姫』
第六巻『弥栄の烏』
外伝『烏百花 蛍の章』
外伝『烏百花 白百合の章』
<第二部>
第一巻『楽園の烏』
現代の政治を映したような印象もある本編とは一変、『烏百花 白百合の章』では、政争の間に生まれる人間模様、というか、烏模様が描かれます。先代のお妃選びの話も出てきて、こういうことがあったからかー、と思わせる構造。いまの金烏のお妃選びを描いた第一巻に、再び手が伸びてしまいます。永遠のループですよ。
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