スキップしてメイン コンテンツに移動

映画「SEOBOK ソボク」#739


今度のコン・ユが守るのは、人類初のクローン人間!

余命わずかな元情報局員と、永遠の命をもつクローンの青年による逃避行。ド派手なカーチェイスに、作り込まれた実験室。

素材はハイテクなんだけれど、いつもの韓流メロドラマ感あふれる展開が待っているのですが。“永遠の命”を持つことは、はたして幸せなことなのかと、メーテルみたいなことを考えてしまいました。

コン・ユとパク・ボゴム主演の映画「SEOBOK ソボク」は、命を巡る哲学的な物語です。

☆☆☆☆☆

映画「SEOBOK ソボク」
http://seobok.jp/

☆☆☆☆☆

<あらすじ>
余命宣告を受けた元情報局員の男ギホンは、人類初のクローン、ソボクの護衛を命じられる。任務早々、何者かの襲撃を受け、逃げ惑うふたり。衝突を繰り返しながら、徐々に心を通わせていくが……。


「ソボク」は漢字で書くと「徐福」となります。史上初の中国統一を果たしたのが、秦の始皇帝。彼に仕えた学者の名前です。始皇帝は、あらゆる権力と富を手にしたものの、死だけは避けては通れません。そこで徐福は不老不死の霊薬を探して東方に船出し、そのまま戻らなかったのだそう。

徐福は日本に渡来していたそうで、佐賀県には徐福を祀る「金立神社」という神社もありました。


秦の始皇帝が車椅子を使っていた、という事実があれば、映画のストーリー的におもしろいなーと思ったのですが、そんなことはなかったようで、残念。

現代の科学をもって誕生した「ソボク」は、不老不死の能力を持つことに。でも中身は10歳の少年で、パク・ボゴムが純粋さと残酷さを併せ持つクローンを演じています。

ビオトープのような場所で純粋培養されていたソボク。

(画像は映画.comより)

謎の襲撃者から逃げるため、より目立たない格好をと、ギホンに服を買ってもらいます。でも、なんでそれを選ぶ!?というセンス!!

(画像は映画.comより)


初めて外に出て、普通の人間と接して、インスタントラーメンを食べて。ソボクが求めていたのは、人のぬくもりだったのではと思わせるチョイスです。「僕には行くところがない」とつぶやく姿は、とても愛らしくて、思わず抱きしめたくなりました。

そんなソボクを“守る”役割を担うギホンは、常に全力投球のコン・ユが演じています。

(画像は映画.comより)


「なんで僕を守るんですか? どうせ僕は死なないのに」

ソボクの本質を突いた質問に、答えられないギホン。なぜなら……、脳腫瘍のため余命宣告を受けている彼は、自分の病気を治せるかどうかがソボクにかかっているからです。

生きる価値はないけど、死にたくない。矛盾を抱えるギホンは、ソボクを守ることができるのか。そして襲撃者はだれか……、というストーリー。

韓国は「SF映画の不毛地」と呼ばれているそうで、そもそもテーマとして扱われることが少なかったなと思います。宇宙船が登場するSF映画なんて、2021年に公開された「スペース・スウィーパーズ」が初ですからね。


そんな状況の中、満を持して「クローン人間」というガッツリSFぽさ満載の素材に取り組んだのは、イ・ヨンジュ監督。画像の右側の方です。左は、またまた“イヤな男”役をみせてくれたチョ・ウジン。

(画像はKMDbより)

前作の「建築学概論」は非常に韓国らしい初恋のメロドラマでした。「ソボク」の脚本を書いていた時、ソボクを女性にするアイディアもあったのだそう。でも、“守る男”コン・ユとの逃避行だと、恋愛モードが発動してしまうかも……というわけで、ソボクは男の子になったと明かしています。

ま、この選択は正解だったのではないかという気がしますが、SF映画だったかといわれると、“ぽさ”はあまり感じません。どこまでも“守る男”の命を賭けた闘いに見えてしまうから。

皮肉なのは、“守る男”コン・ユが、ソボクを守る理由です。「自分のために」という利己的な理由で闘うことになったのは、コン・ユ史上初めてではないかと思います。

利己的なファンドマネージャーがゾンビに襲われ、娘のために自己犠牲を図った「新 感染 ファイナル・エクスプレス」とは、正反対なんですよね。


自分の存在意義を感じられず、眠りを体験してみたいと願うソボク。彼の願いを叶えれば、自分の病を治すことはできません。

ふたりの友情の行き着く先は、「永遠に生きることは、はたして幸せなことなのか?」という問いを、突きつけてきます。

アニメ「銀河鉄道999」の最終回で、鉄郎はあれほど焦がれた夢を手放すことにしました。欲が生む人間の醜さを知ったから。

鉄郎も、ソボクも知っていたのです。限りある命だからこそ、人は一日一日を生きていけるのだと。


映画情報「SEOBOK ソボク」114分(2021年)

監督:イ・ヨンジュ

脚本:イ・ヨンジュ

出演:コン・ユ、パク・ボゴム、チョ・ウジン、チャン・ヨンナム


コメント

このブログの人気の投稿

映画「新しき世界」#293

「アメリカに“ハリウッド”があるように、韓国には“忠武路”という町があります」 第92回アカデミー賞で 「パラサイト 半地下の家族」 が脚本賞を受賞した時、ポン・ジュノ監督と共同で脚本にあたったハン・ジュヌォンは、そう挨拶していました。「この栄光を“忠武路”(チュンムノ)の仲間たちと分かち合いたい」。泣けるなー! ハン・ジュヌォンのスピーチ(1:50くらいから) アメリカにハリウッドがあるように、韓国には忠武路というところがあります。わたしはこの栄光を忠武路の仲間たちと分かち合いたいと思います。ありがとう! #アカデミー賞 https://t.co/LLK7rUPTDI — mame3@韓国映画ファン (@yymame33) February 10, 2020 1955年に「大韓劇場」という大規模映画館ができたことをきっかけに、映画会社が多く集まり、“忠武路”(チュンムノ)は映画の町と呼ばれるようになりました。 一夜にしてスターに躍り出る人や、その浮き沈みも見つめてきた町です。 リュ・スンワン監督×ファン・ジョンミンの映画「生き残るための3つの取引」での脚本が評価されたパク・フンジョン。韓国最大の映画の祭典で、最も権威のある映画賞である「青龍映画賞」で、彼自身は脚本賞を受賞。映画も作品賞を受賞し、一躍“忠武路”の注目を浴びることに。 そうして、自らメガホンを取った作品が「新しき世界」です。 ☆☆☆☆☆ 映画「新しき世界」 Amazonプライム配信 (画像リンクです) ☆☆☆☆☆ <あらすじ> 韓国最大の犯罪組織のトップが事故死し、跡目争いに突入。組織のナンバー2であるチョン・チョンは、部下のジャソンに全幅の信頼を寄せていますが、彼は組織に潜入した警察官でした。この機会にスパイ生活を止めたいと願い出ますが、上司のカン課長の返事はNO。組織壊滅を狙った「新世界」作戦を命じられ……。 あらすじを読んでお分かりのように、思いっきり「ゴッドファーザー」と「インファナル・アフェア」のミックスジュース特盛り「仁義なき戦い」スパイス風味入りです。 無節操といえばそうですけれど、名作のオマージュはヘタをすると二番煎じの域を出なくなっちゃうと思うんです。よいところが薄まっちゃうというか。人気作の続編が、「あれれ?」となるのもそうですよね。ですが。 名作と名作を合わせたら、一大名作が...

キャラクター名“画数グランプリ” 優勝したのは!?「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」 #515

劇場版「鬼滅の刃」が話題ですね。 校閲ガールであるわたしにとって、気になるのはストーリーでも、煉󠄁獄さんのかっこよさでも、興行収入でもありません。 漢字が多すぎ!!! ってことです。 たぶん、すべての校閲ガールや校閲ボーイは、トラウマとなる漢字を持っています。変換ミスや同音異義語を見落とした経験を持っているから……。一度やってしまうと、その漢字を見ただけで「ヒッ!」となります。特に画数の多い漢字はつらいんです。 なのに、 「鬼滅の刃」の登場人物は、全員画数多過ぎでしょ!!! 劇場版「鬼滅の刃」 無限列車編公式サイト 「その刃で、悪夢を断ち斬れ」劇場版「鬼滅の刃」 無限列車編 絶賛公開中!   主人公は竈門炭治郎。その妹は禰豆子。鬼殺隊仲間は、我妻善逸、嘴平伊之助。「鬼殺隊」という名前からすでに怖そうですよね……。ちなみに一度で変換できなくて、「おに」「ころし」「たいちょう」と入力したので、あの日本酒を思い出しました。 清洲城信長 鬼ころしパックが【全国燗酒コンテスト2020】お値打ち熱燗部門 金賞受賞(2年連続受賞)   そんな「鬼殺隊」最強の剣士・煉󠄁獄杏寿郎さんはやはり、漢字の難しさも最高レベル。さすがは炎の呼吸を使う炎柱です。たぶん「隊長」みたいな役職の人です。 今回の映画の敵は魘夢と猗窩座というヤツで、これまで炭治郎たちが戦ってきた鬼よりはるかに強いヤツらしい。文字だけ見ても強そうですもんね。その鬼を束ねている悪の総帥が鬼舞辻無惨。 読み方分かりませんね……? 手書きできませんね……? 「鬼滅の刃」漢字検定1級をとれたらすごいと思います。このアニメとのコラボグッズは、校正するの、大変そう……。 そこで、緊急企画 「画数グランプリ」を開催 したいと思います! 「漢字辞典online」というサイトにて、各キャラクターの名前の画数を確認してみました。 kanji.jitenon.jp 「竈」という漢字を検索すると、こんな感じで表示されます。 この「画数」を足し上げていくのです。さて、優勝したのは!? (表記は公式サイトを基にしています) * * * 第3位:鬼舞辻無惨 54画 第2位:竈門炭治郎 55画 僅差です! 「魘夢」なんて、「魘」だけで24画もありました。これはぶっちぎるのでは……と思いきや、2文字という名前が仇に。けっこうしぶとい強...

日本語を使いこなすために 『助詞・助動詞の辞典』 #478

「校正・校閲」は、「間違い探し」と思っている方が多いようで、とても残念に感じています。「間違い探し」ゲームのようなものなら、どれだけ気楽なことか! わたしが校正を教わった師匠は、「情報を正しくすること」と説明していました。資料をあたったり、日付と曜日を確認したりといった「情報」を確認し、「正しく」整えること。 その中にはもちろん、日本語の文法に合っているかどうかも含まれます。ただ、根拠のない指摘はできないんです。「なんとなく、感覚的に」とか、「わたしならこうは書かない」と思うことがあっても、根拠がなければ単なる揚げ足取りに思われてしまうから。 今の会社でわたしが校正を担当しているのは、主に企業のリリースとweb記事です。以前はインターンの学生に書いてもらった記事も読んでいたのですが、その時いちばん感じたことは。 「日本語の文法を知らない人が多すぎる!!!」 でした。 主語と述語が合わない、いわゆる「ねじれ文」を見たとき。「名詞がね~」や「受け身はね……」なんて説明をしても、「受け身ってなんですか?」から話が始まるのです。道は遠い……。というわけで、自分の勉強のために買った日本語の辞書が『助詞・助動詞の辞典』と『動詞・形容詞・副詞の事典』です。 ☆☆☆☆☆ 『助詞・助動詞の辞典』 https://amzn.to/2U7PWL1 『動詞・形容詞・副詞の事典』 https://amzn.to/3q8Nn7z ☆☆☆☆☆ (なんかビックリする値段になってるからご注意を……。定価は2800円です) この本、どちらも早稲田大学日本語研究教育センター所長の森田良行さんがまとめたものなのですが、「辞典」と「事典」なことにお気づきでしょうか。 『助詞・助動詞の辞典』の方は、「は」と「が」の違いといった解説を載せたもの。 一方の『動詞・形容詞・副詞の事典』はというと、各品詞ごとに文型や用法、類義語を集めた事例の本だからです。 特に重宝しているのは、『助詞・助動詞の辞典』にある「ので」と「から」の違いや、「に」と「へ」の違いです。ざっくり説明すると、こうなります。 「に」:場所→ 駅に行く(駅自体に用事がある) 「へ」:方向→ 駅へ行く(駅の方向に向かう) 一文字違うだけで、ニュアンスがちょっと違うんですよね。はぁ、日本語って奥深い。 日本語学者の方なら、古典の○○の頃には「を」で受けて...